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設計が ほぼ まとまり、
工事見積を地元のあかい工房さんに依頼。
『ほぼ』というのは
改修工事にはある程度つきものなのですが、
解体してみないと状態がわからないところがあるからで、
実際の状況によっては
検討の上、変更しなければならないところも
出てくることが予想されるからです。
そういうやりとりも今まで何度か仕事をしてきた
あかい工房さんとなら協働でいい形を見つけて
クリアーできるでしょう。
( →『猪名川の民家』 ・ →『にろうの家』 )
又、あかい工房さんは
古い茅葺民家を自社の事務所として改修していて、
茅葺民家を直したり移築したりということもされているので
その経験も活かしてもらえそうです。
改修の方針などを現場にて説明しました。
まず大きいのは茅葺屋根の葺き替えです。
葦やすすき、稲わらを使って
厚さ60〜70cm程度に葺かれています。
前回の葺き替えから約30年。
その際は琵琶湖の葦を主材として葺いたようで、
途中の補修や手入れがどの程度されていたかわかりませんが、
今回葺きかえる予定の北面屋根は
腐葉土化して半ば土に戻っており、
草や苔が生えて、
それはそれでなかなか美しい姿なのですが・・・
近くで見てみると、
こんな感じ。
中にはきっとたくさんのカブトムシの幼虫なんかもいるでしょう。
屋根というよりはもはや生態系となっています。
生態系になる屋根、
なんて現代の屋根葺き材ではちょっと考えられません・・。
しかも下におろせば腐葉土として植物や畑の作物なんかを育てた上に、
そのまま土に戻って・・・
(またわらになるものもあり、それはまた屋根になって)
自然の循環の中にかえっていきます。
下地も含めて産業廃棄物にならない屋根も
現代の工業製品ではまだ実現できていないと思います。
姿から感じるおおらかさややわらかさ、
和やかさのような印象には、
勿論、素材の特性から生じる形態的なこともありますが、
自然のわらでできている、ということから
派生するそのような諸々も含めて、
無意識で感じ取っている
いのちの深いところからの安心感のようなもの、
があるような気がします。
風景の中での周囲の自然との馴染み具合も、
自然のいのちの循環から外れていないがゆえに、
見ていて何の違和感をも感じないところから生じてくる印象、
と見ることもできるのではないでしょうか。
そういったことの総体として
私たちは茅葺屋根を
意識と無意識で体験しているとも言えます。
その懐深い奥行の気配を
茅葺屋根の下に入ったときにある、
−前回ここに来たときにその存在の大きさに気がついた−
暗闇の中に
人は感じているのかもしれません。
その闇を生かすような光や灯りが
とても重要になりそうです。
坂口さんが見つけてこられた
手吹きガラスの美しいシェード。
おおやぶ みよさん という作家さんの作品。
ここで望むものにこたえてくれそうな
何かを秘めた感じがあって、
ほのかな光が見えたようでした。
改修に関しては
今回補修しておくほうがよい箇所を直しつつも、
新しい場として再編する為に改修の必要な箇所があり、
そのバランスをどのようにとるか。
まず工事見積を出してもらって、
それによって方針が決まっていくことになります。
あかい工房さん(→)、よろしくお願いいたします。
年明けからの工事に向かって
いよいよ始動し始めた感じです。
森田建築設計事務所
森田 徹