ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
想像していたよりずっと速い。初めて聴く、胎児の心音。
『大人の心拍数の3倍くらい、
ちょうど全力疾走しているときくらいの感じですね・・』
助産師の由美さんの言葉で、
その音の状態に想像力が働き始める。
『10ヶ月で5000倍も成長するんです。すごいスピードで
赤ちゃんは頑張っているんですね・・』
針の先くらいの大きさから3000g近い大きさまで、
そして45億年分の生命進化を辿るように状態が変化していく。
驚異的なスピードで
疾走するかのように成長し続けている。
この心音の状態が24時間続いている、と思うと
人間は誰でも、母親のお腹の中にいる時に、
実は人生最大の
タフでハードな経験をしているのかもしれない、と思う。
エコーの不鮮明な画像は
由美さんのあたたかな愛あるまなざしから生まれる言葉によって
活き活きとした様相に見えてくる。
そこには既に一人の人間の命が、
確かに生きて動いていて、
いとおしい。
「誕生」という、
始まりのゴールに向って
母親のお腹の中で全力疾走している命に、
その命の全力疾走を支える母親に、
無事にゴールすることを祈り、
私は全力で応援する。