北中幸司
『銅板スケッチ』展
− 花 草 木
ノ 生
ヲ 写
ス −
北中さんは
年間を通して昼間の数時間、
屋外で植物と向きあって、スケッチすることで
これらの作品をつくっています。
現場でスケッチした線が
そのまま銅版画として
完成した作品になっていくこと。
ー具体的には
銅板の上に貼られた
トレーシングペーパーの上から鉛筆で線を描くことで
銅板の表面をコートしているグラントという層が
はがれていきます。
グラントのはがれた部分は
腐食液につけたときに銅が腐食されて、インクの入る凹みになります。
現場で描きながら、版の製作工程が半ば同時に進んでいくわけです。
この技法によって、スケッチの線が
そのまま版画として作品に仕上がることが可能になっています。
そのことによって
より直に、深く、感じられるものがここには息づいています。
目の前の花や草や木を見て、
手を動かしている時間。
静謐な中で、生命の流れを感じながら
様々な感動や発見や体験が連続する、
充実した、至福の交流のひとときなのだろうと想像します。
その行程を通して表れてくるもの。
スケッチという言葉は、
日本語では『写生』とも訳されます。
読み下せば、『 生 ヲ 写 ス 』。
原語にこの意味合いがあったのかどうかわかりませんが、
とてもいい翻訳であり、言葉だと思います。
そして、そこからは
北中さんの制作のありようや取り組みの姿勢までもが
伺えるような気がします。
現(うつし)世に 植物という形であらわれた命を
もう一度、
写(うつ)す ことによって、
目に見えない、初めの命の流れを
私たちは感じて、見ることが出来るようになります・・・。
北中さんは
そういう仕事をされているのだと思います。
花 草 木
ノ 生
ヲ 写
ス
作品を見ていると、
知らぬ間に呼吸が深く、
気持ちが静かになっていくような気がします。
我が家の棚に飾ってある作品は、
毎朝出会うたびに、
そのようにしてこちらの気持ちを新鮮にしてくれるようです。
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北中幸司 プロフィール
1969年 大阪生まれ
京都教育大学特修美術科にて彫塑を学ぶ
1994年から2003年まで 彫刻工房『吉田アトリエ』にて
レリーフ・彫刻などの仕事に携わる。
1998年 個展 『北中幸司 作品展』 ギャラリーマロニエ(京都)
― 建築をイメージした石膏による立体作品展
2000年 『Mio 写真奨励賞 2000』 特別賞
― 自作のテラコッタをモノクロ撮影した写真作品
2002年 『国際コイン・デザイン・コンペティション』 佳作入選
― コインのデザイン画、レリーフの原型
2003年 個展 『北中幸司 植物のスケッチ展』 ギャラリーテラ (京都)
2007年から銅版画の制作を始める。
11月の展覧会、
『北中幸司さん』『永塚結貴さん』の個展です。
会場では
料理教室森田からの販売もあります。