↑野庵完成時の姿
現在工事進行中の
京都大原のつくだ農園さんの新しい作業場 野庵 を応援する
クラウドファンディングが
開催されています。(〜10月31日午後11時まで)
大原小出石に残る茅葺古民家を改修及び増築して
つくだ農園さんの取り組む有機農業の新たな拠点とするプロジェクトです。
作業場だけではなく、販売所や農作物の加工厨房、
そして農業塾の座学や作業にも使われる、
多くの人に開かれた場となる予定です。(来春オープン予定)
上記のウェブページでは
つくだ農園さんの就農からここまでの経緯や有機農業への熱い想いが
ご自身の言葉で綴られていて
読み物としても面白くとても興味深い内容です。
私はこの古民家の改修前の様子と設計の際に考えたことを
クラウドファンディングに向けて下記の文章にまとめました。
【つくだ農園野庵について】
大原小出石町の北橋のたもと、道より高野川側の一段低い敷地に建つ、
詳年不明ながら築100年以上のこじんまりした板金覆い茅葺屋根の母屋に
昭和30年代の増築部が繋がった古民家、
が初めて出会ったときの野庵の姿でした。
個室やガス水道対応のキッチン、浴室、トイレの確保設置といった
近代的生活に対応する為の改修増築は、前近代的な母屋を犠牲に
しがちだったようで、積雪や大雨に不適な長い水平の谷を屋根に造ったり、
間取り優先で母屋の構造上大切な隅柱などを撤去したり、
といった矛盾や問題を様々生み出していました。
まるでこの家ができて以来の社会や意識の変化とその矛盾や問題を
そのまま映し出しているかのように。
例えば、茅葺屋根は本来その近場で採集できるススキや葦などの草で、
村の相互扶助であるユイと職人によって葺かれ、
屋根から降ろした後は堆肥として利用される循環の中にありましたが、
それが次第に機能しなくなり、防火上の法規制等もあって、
減少していきました。
一方で、ここのように板金で覆われた茅葺は
かつての循環の中にはありませんが、
その形姿は集落の景観を形作る大切な要素であり、
かつての循環を記憶として現在と未来へ繋げてもいます。
こうした矛盾や問題点と可能性が様々に混在するこの古民家を
つくだ農園さんの作業場とするという観点から、
打ち合わせを重ね、整理してまとめたのがこの改修計画です。
主用途の作業場と販売所と加工厨房は、
作業的に水洗い可能な土間が主体で相互の機能的関連性と、
道から一段下がって、
雨や雪など水や湿気の溜まりやすくなる敷地状況を踏まえ、
簡単な工事ではありませんが、母家躯体を一度ジャッキアップして
母屋と増築部全体に連続する基礎を設けて構造的に一体とし、
同時に地面からの湿気も防ぎます。
また一段下がる敷地形状を生かして、
茅葺部と増築部の屋根架構を整合性のある屋根形状とします。
通風や敷地周辺への眺望をあらためて場所との新しいつながりをつくり、
茅葺屋根下の煤竹は再利用し、外壁は作業場らしく粗い板張りにするなど、
かつての部分と新しい部分が組み合わさって新しい調和を生むように。
ここでの農業塾や販売所を訪れる人々や出荷される農産物や加工品を通して、
つくだ農園さんが有機農業を社会の中で循環させ、
今から未来へと繋げていく為の場として、改修していきます。
皆様にこのプロジェクトについて少しでもご理解や共感を持っていただき、
このクラウドファンディングへの一助につながれば幸いです。
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現在、現場が進行中。
完成目前の物集女のOttè さん。
オーナーの曽祖父様が
90年前に建てられた小舎を改修しています。
元々、氏神様の神社境内の檜が伐採された時に
その材を譲り受けて建てられたものだとか。
長らく納屋として使われてきたのを
今回見直してみると、
粗土壁やこじんまりとした空間の
生み出す親密な雰囲気にとても可能性が感じられ・・・
オーナーが10年前からこの小舎の傍らに自ら窯を築いて
焼いてきたPIZZAとスウィーツなどを出すcaffèとして
生まれ変わることになりました。
上の写真、
手前の古レンガ腰壁のスペースは
新たな石焼窯が設置されるPIZZA厨房です。
内部厨房。
漆喰塗のアーチと古材腰板+天板のカウンターで区切られています。
中央にはイタリア産大理石がはめられます。
奥の客席スペース。
新しく設置したコーナーのアーチ窓。
その外には畑と城跡があります。
コーナーには人研ぎの天板を設置、
下部のニッチには鉄格子を嵌めてACを設置しました。
壁は薄く色を付けた漆喰塗。
土間のサークル状のモザイクは
ここにあったピザ窯の耐火煉瓦を元の窯のサイズで
オーナー自ら配置を決めて敷き並べたもの。
彼とピザ作りの出逢いとその純粋な喜びへの
変わらぬ祝福。
元の窯は改修に合わせて解体されましたが、
新たな窯が再びオーナーの手によって
これから造られます。
古足場板を野地板に使って改修した高天井
から吊り下げられた照明は
上下のリングの間を
透明とすりガラスのバーが交互に並べられたシェードの
アンティーク照明。
シンプルな構成ながら
2種のガラスとその隙間を透過する光の多彩な様が見えて
この場に相応しいものでした。
(器具はARUSE KYOTOさんより)
どこか祈りの空間を思わせるような場になりました。
PIZZAやcaffèを通してイタリアを愛するオーナー夫妻の
想いに耳を傾けつつ、
室内への光や眺めを想ってコーナーに開口を構想するうちに
自然に導かれるようにするすると生まれてきました。
この場の構想を導いたなにかを
言葉にすると色々出てきそうなのですが、
それはここに来られて
食事を頂かれたときには
きっと伝わっていることのような気がします。
もう少しで工事は一段落します。
窯の完成を待ってお店はオープンする予定です。
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久しぶりの更新です。
1年前にHP調整中のお知らせをして以来、
その前の書きかけの現場報告(蔦町の家:気功協会)が
このブログ上では竣工しないままでもう2年が過ぎてしまいました。
インスタグラムではその時々の現場報告など随時行っているので、
最新の状況はそちらを見ていただければと思います。
(HPのトップページにもリンクがあります)
その間に
いくつか物件が竣工しました。
岐阜養老のお米農家さんのお住まい:大場の家、
京都市内町家改修・料理アトリエ+イベントスペース(+お住まい)
:円卓 さん >昨年オープン、活躍中!
大原古民家改修・カフェ(+お住まい)
:Somushi Ohara 素夢子大原 さん >近日オープン!
草津市店舗・中国茶と点心のお店:光ル茶崙 さん >今年6/21オープン!
という感じです。
お店はぜひまた行ってみていただけたら幸いです!
今は
お店の工事(物集女の小舎(仮称):窯焼ピザのお店)と
農家さんの作業場(つくだ農園さん 野庵)の計画など
が進行中です。
今後、こちらで報告できていないものも
可能な限り上げていこうと思っています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
前置きが長くなりましたが、
蔦町の家 現場報告、いよいよ最終回です。
板金工事や内部工事が進む中、
既存のブロック塀補強工事を行いました。
古いブロック塀は敷地内の建物が新築や改築などで確認申請を受けると
現行基準にあった補強が必要になります。(適合していれば不要です)
隣地の方との話し合いなどが必要になりますが
地震の際に安心できる状態にはなります。
ここでは既存ブロックを貫通する座付きボルトを設置し、
新しい控え壁の配筋と既存ブロック塀が一体化するようにしました。
新設控え壁設置完了
引き続き、
元の玄関前に合った大きな敷石を再設置しました。
一段上がるのでそれに合わせて設置高さ調整。
といった作業などなどを経て、
いよいよ竣工、
完了検査及び引き渡しの9/23を迎えました。
この日は施主の天野先生純子さんご夫妻にとって
とても縁深い大切な日でした。間に合ってよかったです。
外部アプローチ
この後、植栽などが施され、今は趣ある佇まいです
玄関軒下
既存の敷石と既存の玄関建具を再利用しました。
雨の日もゆったり家に入れるように深い軒です。
玄関
玄関から道場へは縁なし畳で広々と
式台は既存の古材を再利用
正面の窓外にはその後風情ある庭が出来上がっています。
松竹梅の板戸を納めた玄関
松と梅の透かし彫りに竹の押さえ縁で
めでたし(ご縁あって出逢った古建具です)
玄関引き違い戸の後ろには網戸を設置して
風が通せるようにしてあります。
道場
畳も清々しく広々した道場 床暖房も入って冬も快適に
開口高さは隣地塀の天端より上が見えない高さとし、
またそのことで視線を誘導して
自然に座れるようにしたピクチャーウィンドウ
庭が出来上がって完成します(今は風情ある庭が出来ています)
階段
緩やかな勾配で軽快に昇り降りできるように
段板を透かして軽やかな印象の木階段
2階洗面
掃き出し窓内側の筬格子戸で目線を遮りつつ風を通します。
木製カウンターに落とし込み陶製シンク
方杖が支える庭側軒庇
板庇で室内からのつながりを感じさせるような仕上がり
玄関庇も同じように黒い小波板の外壁に内側の木の仕上げが見えるように
なっています。 将来は濡れ縁が付く予定
みんなで記念撮影
今回もまた櫛谷建築さんには
大変急ぎつつもとても丁寧で熱のこもった仕事をしていただきました
ありがとうございました。
天野先生と純子さん
大変お待たせいたしました。
改修の予定から思わぬ変更となりましたが、結果的には
必要なものだけが形になったような気がいたします。
ありがとうございました。
そして、ここは今、気功協会の道場として
日々活き活きと活動の場となっています。
興味のある方はぜひ下記から、
気功協会の活動に参加なさってください。
NPO法人気功協会 気功のひろば ⇒
< 前回
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森田建築設計事務所のHPについてのお知らせです。
現在、HP内問い合わせフォームに不具合が発生しており、
そこからメール送信していただいても
うまく受け取れない状態になっています。
その部分を復旧中です。
予定では10/3には修理完了の予定ですが
それまでにもしお急ぎのご連絡ある方がいらっしゃいましたら
事務所のFAXへ連絡先とご用件を書いてお送りください。
こちらからあらためて連絡させていただきます。
ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが
よろしくお願いいたします。
2021.9.30
森田建築設計事務所
森田 徹
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前回の投稿から
1か月半くらい経ち、
子供たちも新しい環境と生活に慣れてきました。
新しいお友達も出来て新たな生活を楽しんでいます。
この間に
大原での新たな現場の地鎮祭などもありました。
(※オンタイムでの報告は
基本インスタグラムにアップしていますので
またそちらもご覧になってみてください。)
・・・・・・・・・・・・
蔦町の家からの現場報告は
去年の8月末頃に戻ります。
とても暑い盛りでしたが
現場では
外部の板金工事と
内部の造作工事が進んでいました。
外壁に施工中。
ガルバリウム鋼板小波板の凹凸が
外壁通気層になります。
張り上がると
簡素ながらシンプルで潔い表情。
丸い波が柔らかい印象も与えます。
外壁は
軒裏まで小波板通気層が確保されていて・・
片流れ屋根の
下側軒裏には通気口を設置。
ここから屋根内断熱材の上を通気が流れ・・・
片流れ屋根の
最高部である棟から
棟換気金物の穴を通って
空気が抜けていきます。
夏場の熱気が
屋根の中にこもることを防ぎます。
暑い中ですが、
ここでの板金作業は
外でしかできないので大変!ご苦労様でした。
玄関庇も葺き終わり、
外壁板金が張り上がってきた玄関、
内が外にあらわれてつながるところ。
一方、
内部では
造作工事が各所で進んでいます。
2階の中央大黒柱前。
大黒柱の大きさがよくわかります。
2階北側の
洗面室の造作工事中。
洗面カウンターと洗濯機収納が一体に。
設備配管も含めて、
造作によって諸々が整理+配置されていきます。
1階も
造作工事進行中。
道場の天井が張り上がりました。
そこで書棚の制作中。
庭の隅によけておいた元の敷石。
今度もまた
新しくなった玄関前で使う予定です。
9月の後半に
予定されている竣工引き渡し期限に向けて
内外で工事が進んでいきます。
現場の皆さまよろしくお願いいたします。
(つづく)
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今日(正確には昨日)、
4/8は息子の小学校の入学式でした。
また新たな扉が開いて進んでいく、
ピカピカの子供たちの姿を見るのは
とてもうれしくて、応援しているよ!
という気持ちになりました。
明日から、新しい生活が始まります。
・・・・・・・・・・・
さて、
蔦町の家からの現場報告は
去年の8月に戻ります。
現場の作業が進んで造作に入る前、
古建具を色々探していました。
玄関建具は
元の家の玄関引き違い格子戸を
再び使うことにしていたのですが、
そのほかの内部建具にも古建具を使います。
大体一度探しに行っただけでは、
ぴったりのもの全ては揃いません。
何度か探しに行くうちに
相応しいものが決まってくるのですが、
不思議なことに
大抵そこに相応しい建具がなぜか現れてきます。
今回もそう感じられる建具がほぼほぼ揃ってきたかな、
という頃合いで最終決定するために
天野先生ご夫妻にも一緒に見に行っていただきました。
お二人もネットで熱心に探されていました。が、
実物を見られる方が
やはり感じられるものはたくさんあります。
この透かし彫りの松と梅に
竹の押さえの入った、
松竹梅の寿(ことぶき)な建具は
その際にひょっこり現れたもので、
やはり引き合う何かがあったのでしょう。
天野先生も一目で気に入り、
ぜひ使いたいとなって、
玄関収納の建具に使うことになりました。
他にも色々、相応しい建具が決まってよかったです。
また、現場では
前の家の造作に使われていた古材板を
どこにどのように使うかを
お二人と一緒に検討して決めました。
結果的には
適材適所で使うことができたと思います。
内部のボード張りも進んでいます。
2階洗面室辺り。
断熱材仕込み終わってこれからボード張りへ。
外部板金仕上げの施工も始まりました。
こちらは下屋庇の屋根。
ガルバリウム鋼板の小波板葺き。
その上部の方は
2階リビングの南側ハイサイドライト。
下屋庇の下は・・・
引き込み窓の敷鴨居が出来上がっています。
玄関庇にも
板金屋根が葺かれてきました。
暑い中、
外部の板金仕上げが進んでいきます。
よろしくお願いいたします!
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今年は
桜の咲き始めが早かったような気がします。
賀茂川は5分咲きか6分咲きといった感じ。
もうこうなると出かけずにはいられませんね。。。
室内から外へ。
本来、
花見は花の下に入って
その精を浴びる無病息災の行為だったとか。
たとえ科学的といえなくても、
体感的には納得できるものがあります。
この内側から「はる(張る)」季節、
「ふゆ(増ゆ・殖ゆ)」のあいだ
つぼみとして中で膨らんできたものが
外に向かってついに花として開いた、この動きに
私たちがいのちとして同調するのはとても自然なこと。
同じ季節の経過と変化を
私たちも内側で経てきて、
それがマックスになったこの季節に
花として開いてくれた桜の下に行って、
内側での目に見えない変化を
外側での目に見える変化として体験することで
季節の中でのいのちの大きな変化を感じ確認することは
とても自然な「無病息災」につながる行為だったと感じます。
私たちはそんな風に
桜と、
そして季節と関わりあっている。
つながっている一つのいのちとして
それぞれ存在していることを確認できることが、
花見という行為の中にもあるようです。
・・・・・・・・・・・・・
前置きが長くなりましたが・・。
建築を造るという行為は
「関わり合いを(目に見える形として)つくる」
ということもできると思うのです。
そもそも
素材同士、部材同士が関わりあって
建築自体が成り立っていますが、
そうして出来上がったものは、
色々な意味で世界との関わりあいを
方向付けます。
(=どのように関わりあうかという意思が姿かたちになる、
とも言えます)
蔦町の家でのそのような部分から
わかりやすいところを紹介してみたいと思います。
家の外観です。
左側が南面。右正面が東側です。
旗竿敷地なので周囲を家に囲まれ、
実際にはこんな風には見えてきませんが・・
南側隣地には
3階建てのマンションがあってその共用通路に面しています。
ここからの目線が前の家ではとても気になったようで、
境の塀に高い樹脂竹のフェンスを設置していました。( → )
そこで今回は、
2階には南側正面に開いた開口部を
目線に絡む高さにはほとんど設置しませんでした。
(外観パースにはないですが
キッチン前には小さな窓を設けています)
空を仰ぐハイサイドライトがメインの開口になっています。
1階には
庭に面して大きな開口部を設けていますが、
高さを抑えて、
庭だけが見えて隣家が目に入ってこないようにしてあります。
これで以前のような高い樹脂竹フェンスも不要になり、
無意識に隣家の目線を感じることもなくなって
気持ちが解放されます。
1階南東角の開口部。
座って作業をしている様子から
その開口高さがうかがえると思います。
こちらは同じ南面で西寄りの開口部・・
ちょうど玄関の正面で
ここでも庭だけが見えてきます。
訪れた人は正面の庭を目にして、
落ち着いた気持になるでしょう。
道からの長いアプローチを経ると、
そこに静かで心地よい場所がある・・。
これらの開口には
前回紹介した庇が付いています。
庇が内と外の中間ゾーンをつくり、
庭と室内の関わりあいを生み出します。
室内への強い日差しを遮り、
雨降りでも窓を開けておくことができて、
庭の存在が近くなります。
窓は全部引き込んで隠れるようにしてあります。
庇が生み出す関わりあいは、
ここでは玄関庇も大きな役割を果たします。
パースのように玄関庇は
腕木で持ち出して奥行き1200mmほどの
たっぷりとした深さをもたせてあります。
例えば雨降りの時には
そこで傘をさしたり閉じたりするのに十分なスペースがありますし、
訪れたときに
そこでちょっと気持ちを切り替えられる場所にもなりそうです・・・
人をそんな風にゆったりと迎える庇は、
ここに住まいする人の想いも伝えます。
その庇が出来つつあります。
腕木と出桁の上は垂木無し、
厚板野地板のみですっきりと、簡素に。
腕木の鼻先は曲線で柔らかな印象に、
入ってくる人への当たりを穏やかに、
そして白木で清々と。
伝統的なスタイルそのままではないですが
どこか社寺の庇のような造り は
長く受け継がれてきた伝統の智慧を基底にしながら、
新旧問わず本質的な体へのはたらきかけを
気功とよんでまとめながら人々へ伝えている気功協会の姿勢も
表せるのではないかなと考えながら、形をまとめました。
その入口にふさわしいとも想って。
そしてまた、
現代の宮大工集団である櫛谷建築が
その施工をするのもとても相応しい。
この庇にはそうした諸々の関わり合いが含まれています。
この庇が出来上がってきたのが
ちょうど7月の末、
8月を目前にした頃でした。
(つづく)
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少しずつ
暖かくなってきた3月、
いよいよ大詰めで竣工を控えた現場や
進行している現場のある一方で、
設計作業を進めているプロジェクトもあって、
春に一気に草花や虫たちが姿を現すように、
これからいろいろな建築たちが
それぞれの段階で姿を現してくる気配に満ちた
今日この頃です。
・・・・・・・・・・・
現場報告の方は
棟上げの後、去年の7月頃に戻ります。
中心に立つ 7寸角大黒柱
材が運び込まれ、
柱と梁の接合部には金物が取り付けられて
これから軸組をしっかりと固めていきます。
同時に屋根も早急に仕上げていきます。
屋根内断熱材は設置完了。
下葺が終わって
板金で葺きあがるのを待つばかりです。
梅雨時期で天気が続かない頃でした。
外壁下地に
耐力壁になる面材が張り進められています。
開口部形状も姿を現してきます。
この頃、
現場で周りの見え方なども実際に確認しつつ、
天野先生にも立ち会っていただいて、
サッシの形状や寸法を調整して
最終決定しました。
そのような中、
雨の合間をぬって大屋根の
ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き完了。
7/7七夕には
無事に中間検査もクリア。
何かと節目に意味ありな日が来る現場です。。。
2階
壁が立ち上がり、空間が見えてきます。
南側のハイサイドライトは
仰ぎ見る空に向かって開かれています。
1階の道場コーナー開口部の
壁下地が出来上がってきました。
道場の開口は高さを抑え、
隣家は隠れて
庭だけが見えてくるようにしてあります。
これは既存の改修計画のときから決めていた
周囲とのかかわり方。
その外側では
庇が出来上がりつつありました・・
厚板と腕木と桁に方杖で構成。
南と東半ばまでの二辺をぐるりと覆います。
直線の庇が端から端まで延びるさまは
どこか気持ちよく、心弾む光景。
内と外のかかわりあいが生まれてきます。
設備関係の工事も進んでいきます。
2階にユニットバスが搬入、設置されました。
奥の方ではトイレになる部分のサッシが設置。
2階洗面室のサッシも設置されました。
ここは南北を結ぶ通風の為に
引込の掃き出し窓で大きく開口を確保しています。
水廻りなので
光もたくさん入るほうが気持ちいいでしょう。
1階玄関
上に2階の水廻りがあり、
1階に道場のトイレなどもあって
設備配管が集中してきます。
人でいえば
骨格や内臓にあたるような部分
の工事が進んでいきます。
(つづく)
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古い納屋を改装して
楽しい場所に改修する計画を進めています。
薪のピザ窯のあるピッツェリア。
こんな感じ。
下屋庇の下に
古レンガを積んで窯のスペースを造ります。
古レンガには穴あけ加工をして鉄筋を通す補強積みで
木造部とは構造的には切り離します。
現場にサンプルを持ち込んで検討。
イギリスから渡ってきた古レンガ。
こんな感じの古い納屋。
築90年近くになる、ご縁と由緒ある建築。
近くの神社境内から木が切りだされたのを
祖父様が譲り受けて普請したそうです。
内部は粗壁の土壁に
丸太と面皮柱の柱梁組で
なんともいえぬ素朴で落ち着いた風情があります。
この納屋の横には
お施主さんの手になる薪のピザ窯が既にあり、
もう数年ピザを焼いてきて、
沢山の友人知人に振舞われてきました。
僕も頂きましたがBUONO!!
そんなイタリア愛とピザ愛とピザ窯愛とが高じて
今回の計画に至りました。
長らく納屋として使われてきたこの場所が
経年の内に生み出した雰囲気と
その由緒にこめられた密やかな使命を
今これから、
全うしようとしているのかもしれません。
愛に満たされて。
・・今日はまた、
別の場所での楽しい計画が
節目を迎えた日でもありました。
そちらもまた折を見て報告していきます。
(つづく)
>次回
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今週は
以前から進めていた
大原で古い平家を改修するプロジェクト
のかたちがまとまって、
竣工目標も決まり、次のフェーズに進んで
実施に向けて作業を進行していきます。
そこは
とても眺めも良く、気持ちの良い場所で
小さなカフェもできます。
またこちらでも進行をお知らせしていきます。
・・・・・・・・・・・・・
さて、
蔦町の家の現場報告は
去年の6月16日に戻ります。
翌日から始まる建て方に向けて・・・
組まれた足場にシートがかけられて
旗のように風に揺れています。
現場の準備は万全のようです。
その2日後、
土台伏せが終わって今日から柱が立ち上がる日、
午前中から雨が降ってきました。
現場に様子を尋ねると、
大丈夫ですとの親方の答え。
午後から現場に様子を見に行くと・・
雨の中にもかかわらず、
早くも
無事に通し柱と2階の床まで・・
立ち上がっています!
田の字中央には
7寸角通しの大黒柱が立ちます。
1階床合板を
仮止めして床を先に組み、
足場を確保し、
八人がかりで作業して
作業効率を高めたとのこと。
その床も雨対策のビニル養生がされています。
・・にしても
予想以上に早くきれいに進んだ印象。
さすが櫛谷建築さん。
田の字各交点に立ち上がった
5寸角通し柱、
今日はその上に
屋根代わりのブルーシートを掛けて
明日に備えます。
風にはためく青い天幕と
フラットな床から立ち上がるヒノキの柱に
とても自由で軽やかな建築
を感じました。
翌日は・・
その上に小屋梁が架かって
大屋根の垂木が流されました。
階段室からの見上げ。
2階大屋根は
1枚の南から北への片流れ屋根です。
南側の地廻り上は
ハイサイドライトになります。
早い箇所では
屋根内の断熱材が設置され始めています。
この日もてきぱきと作業は順調に進んだ様子。
心配された天候も無事クリアできて
現場を確認に来られた
天野先生も安心された様子。
いよいよ明日は上棟式です。
迎えた翌20日、晴れて上棟式。
ブルーシート天幕を外し
天空の青を屋根にして・・
気功協会の理事面々も集まって
式の準備を進めます。
大黒柱の前に組まれた祭壇
棟札も晴れ晴れしく
上棟式も地鎮祭と同じく
施主の天野先生自らの先導で
天野家、気功協会の理事面々、
そして施工の櫛谷建築さんと設計の私と
みなでこころあわせて式が進んでいきます。
四方祓いで通しの各柱に
お清めのお酒とお塩をまく先生と純子さん
お二人が
真中の大黒柱の周りを巡る姿に
国生み神話の光景が重なりました。
祈りがあって
新しい時代に向けた
新しい場が生まれてくることはいつも
その相似なのかもしれません。
もしくは
そこに共鳴するのかもしれません。
そして・・・
櫛谷建築の親方と橋爪さん、
太田垣さんの三人での
棟をかけやで打ち込む槌打ちの儀
『千歳棟 万歳棟 永永棟』
の掛け声に皆が唱和し、
それに呼応して
木槌で打ち固める音が
空に響いて
家がまたしっかりと締め固まった感がありました。
このあと
丹羽さんの五十鈴と寿々歌が奉納されました。
皆の内なる祈りをうたにして
天へと繋いだかのようでした。
そして、
皆さんからの心づくしの直会に
この場づくりが
無事全うされたさまとその熱を
予め感じるようでした。
この日は
天野家の娘さんで年女の蓮ちゃんのお誕生日でもあり、
先生方の師のお一人である劉漢文先生のご命日でもあり、
一粒万倍日、天赦日という吉日。
その日にまたぴたりと
無事に上棟式を迎えられたことに
運命的なものを感じました。
余談ながら、今日
このブログを書いている日がまた
国造りの記念日 ということも
何か偶然以上のものがある?
・・のかもしれません。
現場は
竣工へ向けてさらに進んでいきます。
(つづく)
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今、工事が進行している
住宅の現場で使うガラスです。
基本、白で虹色に輝いています。
光は通しますが
向こうは見通せず、影が映るくらい。
ステンドグラスに使う材料のガラスです。
名前を icewhite iridesent
(アイスホワイト イリデセント)と言います。
イリデセントは 虹色の とか 玉虫色 とかいう意味。
『氷の白の虹色』、ってイメージ膨らむ名前です。
今回はこれを
水回りそばの間仕切りにはめて使います。
ガラスの製法上、
端にうねうねした曲線の耳が出来ます。
これもなかなか面白い表情ですが、
このままでは木枠にはめられないので
カットします。
ガラスカッターを入れて・・・
力を入れてぱきっと折り切る感じ 思い切りよく
小口を研磨して出来上がりです。
板自体も結構うねりがあります。
それが独特の表情を生んでいます。
事務所の近所の
ステンドグラス工房ガラシャさんで
加工など含めてお願いしています。
いつもありがとうございます。
木枠にはまったところが楽しみです。
]]>
今日は
事務所にて一日設計作業。
今進行中のプロジェクトの一つは
京都の西(物集女)の方で古い小屋を改修して
薪のピザ窯のお店を造るもの。
面白いお店になりそうです。
またこちらでも報告します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、
前回敷地への埋炭まで進んだ蔦町の家。
その1週間後の5月末には
基礎配筋工事が・・・
完了しました。
一部修正してもらい完了。
基礎立ち上がり部配筋から平面が見えてきます。
数日後・・
コンクリート打設完了。
なかなかしっかりきれいに打てていそうな感じです。
より平面がくっきり見えてきました。
大きな田の字間取りの正方形の平面です。
改修から新築に
計画が変更になったとき、
コストを抑えるためにも
なるべくシンプルかつコンパクトに
まとめる必要がありました。
天野先生ご夫妻に閃いたのは
京間8畳×4の田の字平面 総2階建。
1階の半分は道場の和室。
片流れ屋根にして屋根形状もシンプルに。
届いた間取り図のメモを見ていて、
これは新しい民家だと感じました。
かつての民家でスペースの半分を占めた土間では
様々な作業がされて何かが生まれてきましたが、
ここでは いのちのすこやかさ が生まれてくる。
そんなイメージがメモの平面から感じられて
その後の設計をまとめていく導きになりました。
敷地内の配置は
既存の配置を踏襲しつつ、
斜線規制などを考慮しながら調整していくと
既存で座敷から庭への関係が心地よかった
東南角の位置がほぼ同じ辺りに来ました。
数日後、
型枠が外れました。
奥のコーナーが東南角です。
コンクリートを打ち終わって
まだ型枠のある時に感じた通り、
きれいに打ちあがっていました。
周囲には
近々の棟上げに備えて足場も組まれています。
今、協会とお住まいのある町家の
契約期間が終了する秋口までに竣工して、
引っ越して頂かなくてはなりません。
この頃、
天候があまり芳しくない日が続いていましたが、
予定通りの棟上げに向けて、
木部の加工と準備が着々と進んでいました。
(つづく)
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今日は朝から雨降りで
なんとなくあたたかな感じの日。
仕事の合間に休憩を兼ねて
書き綴っています。
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さて、
吉田の家の現場報告続きです。
・・前回からまた少し進んで7月の頭になりました。
現場では壁の塗装が完了。
壁が仕上がると
場の空気感が変わります。
ここまで積み重ねた仕事が
一つのものにまとまって見えてきます
桐パネルの新規天井を加工する大ちゃん。
いつも繊細で丁寧な仕事です。
コーナー右手の収納開口の鴨居は
既存を再利用しました。
元はここに引き違いの押入開口がありました。
古建具の建て合わせをしながら
数日後に迫った引き渡しに備えます。
2階の間仕切り襖は
入子障子付の板戸に入れ替えました。
きれいな意匠の組子で清々とした印象です。
・・現場帰りの賀茂川。
この頃、降り続いた長雨で水が増水していました。
川原の道は橋の下などに
上流から流されてきた木が転がっていて
通れなかったのです。
さて、その数日後、
いよいよ引き渡しの日が来ました。
晴れて竣工です。
2階の座敷。
畳を板床に変え、
襖だったところを古建具で入れ替えました。
元々客間として造られ、使われていた部屋なので
床の間周りの造作もきちんとしてありました。
1階。
廊下や座敷に分かれていた空間を一つに。
杉板の床が繋ぎます。
保存再生された網代天井が生きて
この場に独特のキャラクターを与えてくれます。
周囲の新たな天井は桐パネル。
正面北庭への開口は
高さを下げて奥の隣家との視線が合わないように。
庭は余分な増築を解体してもう一度再生されました。
(これは道路側の南庭も同様です)
キッチン側。
造作で新たに造ったカウンターと収納。
カウンター収納には網代建具で天井と揃いました。
コーナー収納。
古建具 目板格子戸の引き込み戸。
その右に新たに出来た大きな壁面には
絵や写真を掛けても映えます。
その際、照明が当てられるようにしてあります。
キッチン。
機能的な業務用器具で構成。
シンクの手前には冷蔵庫を設置します。
その対面には
新たに設けた目板格子戸付の収納棚と
カウンター収納。
ガスオーブンは白い鉄板で囲いました。
(後日この上に遮熱板を設置。)
カウンター下は
キッチン側からと網代建具付きのダイニング側の
両方に収納が設けられています。
カウンター天板は
古材板で造りました。
正面には新たに設けた収納。
古建具の舞良戸が
それぞれ4枚ずつの揃いで入っています。
収納の上には壁付エアコンのニッチ。
篠竹けんどんの建具でカバーしました。
キッチンを出ると・・
新たに再生なった北庭。
焼杉板の塀で囲われました。
前の家から引っ越してきた植物たちがよく映えます。
右手の竹は物干し用。植栽が育った庭が楽しみです。
一方、表側南庭は・・
道路と同じレベルに切り下げた自転車置き場と
格子の塀が出来つつあります。
後日、完成した様子。
石の格子パネルも嵌められました。
この中に植栽が育って庭になっていきます。
外での食事やお茶のできるスペースになるように
(ちょっとした工夫があります)
育った木陰の下、そうなる日が楽しみです。
左手、元からあった出入口扉は焼き杉板で直しました。
さて、
この日に届かなかったペンダント照明・・
後日、手前と奥に2灯設置しました。
よく合っています。
天井の意匠を損ねないよう、
ちょっと一工夫。
吊元をすっきりさせてローゼットは見せていません。
明かりが灯って完成。
家具や庭からここで始まった新たな生活の
楽し気な感じが伝わってくるようです。
櫛谷建築の皆さん、
最後まで丁寧な仕事で仕上げていただき、
ありがとうございました。
お向かいに
子供のころから住んでいるおじさんも
網代天井が再生されて面影を残しつつ
新しくなったこの家の改修を喜んでくれたそうです。
車も通らない細い通り
古い家の立ち並ぶ
静かで慎ましやかな落ち着いた界隈
ここのお施主様も車を手放して
自転車とバイクだけで身軽に。
竣工してしばらく経った夏の日・・
小さな改修の相談をしつつ
よく冷えたお茶の香と
新調したカーテンを
穏やかに揺らす風に
この場所と
この家と
ここに住む人が
同じ調和(波動)の中にあることを
感じました。
それはまた、
この家が
このようにできることが
長い大きな流れの中にあって
起こったことで
その中でそれぞれなすべきことをなした
ということを確認できた
ささやかですが
たとえようのない不思議な幸福感
を感じた
ひとときでもありました。
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昨日と一昨日は街中で
明治末年に建った町家の実測調査をしていました。
大きな建物で部材も大きいのですが、
戦争中に火事になり
大屋根が焼けたことがあったそうです。
外からはあまりその痕跡がわからなかったのですが、
小屋裏に入って調査した時に、
軒桁や妻梁の表面が
焼杉板のように完全に炭化した姿で残っているのを見て
これか!と思いました。
部材の大きさが燃え代となって
構造耐力を失っていなかったようです。
表面20mmくらいが炭化しています。
木材燃焼時の平均炭化スピードは
毎分0.6mmとされているので
約33分くらい盛んに燃え続けていたことになります。
横架材下の柱頭も炭化しており、
これは後から添え柱が施されていました。
小屋梁とその上の束・母屋や垂木、野地板などは
焦げ跡もなく新しくしてありました。
2階床梁や胴差は燃えた痕跡がないので
2階から上だけが燃えたようです。
屋根自体は造り直したようですが、
建物本体は焼け落ちることなく、残ったのでした。
その通りの大きな景観要素となっている建物でもあり、
失われずに来たことはよろこばしいことです。
周囲はほとんどかつての姿を失っていますが、
これは戦後、ここ数十年の間のことで
戦争で焼けたわけではありません。
もちろん、
社会の変化によって
失われていった状況と理由はわかりますし、
一概に否定もできないことです。
ですが、今はまた
そのときに選択できなかった、
『残しつつ受け継ぎ、生まれてくる新しいありよう』について
あらためて再考し、
何か別の答えを見出すことのできる
機会が訪れていると思います。
人が集まって暮らすということから考え直してみる・・
この建物について、
そのようなことも含めた上で
これからの姿やありようを想像し、
新しいいのち(使われること)を与えることを考えています。
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新年あけましておめでとうございます。
元旦、北山大橋からの賀茂川、初日の出です。
今年は4日から仕事を始めました。
とはいえ、
まだ冬休みだったので子供との時間も楽しみながら・・
年明け早々のスイミングの親子遊びも面白かったなあ。
1年前より格段に水と仲良くなっている姿が微笑ましく、
また、成長の早さを感じました。
今日から
冬休みも終わって本格始動です。
今年、去年から引き続いて
いくつかのプロジェクトが動いていて、
どれも楽しみなのですが、
その中の一つに
これから将来、
町に住み続けるとはどういうことか
そのために(建築は)どうあればいいか、
ということについて考え、形にしていく
プロジェクトがあります。
(どれも突き詰めていえばそうなのですが、
これは特にそのために新たな形をつくることが必要になる、
挑戦です)
昨年、コロナによって家で過ごした時間や体験、
考えたことが大きく反映されることになりそうです。
そしてまだまだ深く広く考えていきます。
新たに見えてくるものを楽しみに。
そこからあらわれてくる形を探して。
本年もどうぞよろしくお願いします。
森田建築設計事務所 森田徹
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