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『本を読まない男たちへ』 おすすめの本 第3回


五重塔 (岩波文庫)
幸田 露伴 (著)

明治の文豪、幸田露伴の傑作。

「のっそり」とあだ名される大工十兵衛が
義理も人情も捨てて谷中感応寺の五重塔建立に
一身を捧げる姿。

ものづくりの人なら共感する部分も多いかもしれない。
そうではなくても、何かに対してここまで没頭邁進出来るのは
ある意味幸せだと誰もが思うことだろう。
様々な情報が飛び交っている現代では、
そのものに飛び込む前に
どこかで情報を仕入れて分かった気になってしまい、
表面的で希薄な関わりしか出来なくなっていることが多いように思う。
行為が手段ではなく、そのものが目的になること。
金銭で価値を計るのが一般的になってしまうと、
行為が手段になっていることに気づかないまま、
こういう風なものとの関わり方を生み出す回路は閉じられていく。
・・・といって、十兵衛の時代にも彼の様なあり方が一般であった訳ではないが。
ただ、代表的なものとして、信仰や芸などを通じてそこに至る道がある、
ということを当時の人々はよく知っていただろう。

この物語を綴る文体がまた美しい。
声に出して読むとよくわかる、日本語の独特の間と流れがここにはある。
躍動感のある脈動がありながら単調ではない刻みで
言葉の流れと一体化した旋律の様なものを感じる。
この日本語があってはじめて、この物語や人物描写、
当時の社会通念や人々の心意気が活き活きと立ち現れてくる。
川を流れる水のような融通無碍さ。ここにある間合いそのものが
日本語の特質や日本人の精神性、文化などを生み出す基盤になっていた
ということに気がつく。
読んでみれば、自分の中の日本語の記憶が感応しているのが感じられるだろう。
現代を流れるリズムとはまた違うが、
心地よい脈動が自分の奥の方のものと共鳴してくる。

音楽を聴くように読んでみるという感覚。
露伴の建てた『五重塔』は凍れる音楽ではなく、
いつでも揺らいでいる。

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