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「民家は生きてきた」 ー オダチ組 (心根 古民家後日譚)

 

 

 

最近、出逢った

『 民家は生きてきた 』(伊藤ていじ 著)

という本。

数年前、鹿島出版会から復刊された名著。

建築家の内藤廣さんのまえがきがまた

出版時のおよそ50数年前から現代までの時間差を

一気に埋め合わせてくれるような、よい文章で

書店での立ち読みからつい購入してしまいました・・。

(この本を読んでいたであろう、僕の師匠の世代の建築家達の

古民家に対する思いや感じ方の背景も見えてきて面白かったです。)

 

興味深く読んだのですが、

その中で「山陽路」という章の中で、

丹波地方の民家についての記述があり、

その特徴のひとつとして、オダチ組が出ています。

 

茅葺屋根の小屋組みとして、

丸太を合掌につき合わせて組むサス組という形式が

一般的なのですが、

近畿地方だけ、

特に丹波地方と紀州南部に多く見られる形式として

棟木を受ける束(オダチ)を立てて、

そこからほぼ放射線状に太い丸太の垂木を流す造りがあり、

それをオダチ組と呼んでいます。

 

心根さんの古民家は

実測の際、小屋裏を見ていて

普通のサス組ではなく、棟束が立っていたので

珍しい形式だなという印象がありました。

それがどうやらこのオダチ組だったということを

この本であらためて知りました。

 

 

実測時の小屋裏。

葺き替え用のわらが沢山積まれています。

(無人の期間、アライグマの寝床になっていたようでした・・)

中央に棟束(オダチ)が見えます。

手前と奥の二本並んで立っていますが、

貫でつながっているわけでもなく、

独立で立っているだけです。

この本では、

丹波民家ではオダチの両脇にトリイと称する構えで

支えているのでかなりしっかりしているとの記述がありましたが、

それとは違い、より古式な造りにも見えます。

 

 

また一方では、

合わせて合掌(サス)的な部材

(中央の垂木丸太の内側に斜めに立ち上がる部材)も使われており、

サス組とオダチ組の混淆した過渡的な手法のようにも見えます。

といって、

この民家が時代的にそれほど古いものとは思えません。

 

−棟札も見つからず、築年月日は不明です。

近所の方の話では

少なくとも100年以上は経っているとのことで、

明治かそれよりも古いものだろうとのことでした−

 

 

今回の改修では

ここは空調機本体の設置場所になりました。

 

 

100年以上重ねた日々の炊事の煙による煤が

いくらでも落ちてくるので、

透湿シートでカバーすることにしました。

 

オダチ組の特徴としては

オダチに荷重がかかるので、

棟束を受けている中央列に柱が並ぶことになるのですが

ここでもそのようになっています。

そして、改修前は

その列(エントランス正面の丸窓のある壁面通り)の

を抜いた箇所があったために

その部分がかなり下がっていました。

今回はそこを上げ直した上で、

補強する柱を新たに入れてあります。

 

心根さんのある高槻市中畑は

元々丹波の一部で、

都に近い、いわゆる口丹波といわれる地域にあたります。

この辺りからぽつぽつとオダチ組が始まり、

これより丹波の先のほうへ進むとそれが主流になっていくようです。

技術の切り替わる地域としての特徴を

よく示す一つの例だとも言えるかもしれません。

 

 

この本、『民家は生きてきた』の著者による概説の最後に

「民家は保存さるべきである」という一節があります。

(以下引用・・

 

 民家は人間がつくったものである。この人間がつくったものにたいして、

等しく敬意を払うことは、人間の努力に対する正当な評価であり、

まさに人間的な行為である。

 しかも私たちがこうした民家を有意義に保存できるかどうかということは、

過去の遺産の研究資料的価値の大小よりも、

むしろ現代再建のイメージが豊かであるか否かにかかわりあっている。

建設のために民家をこわしてよいとする者は、

人間の努力に対する軽蔑であると同時に、それは自らの努力が

後世の人たちから軽蔑を招きかねないほど怠慢であることを

予想させるものであり、自らの現在の努力への誠実さを疑わせるものである。

つまりそれは彼等の建設のイメージが、いかに貧困であるかを告白するものに

ほかならない。

 もし私たちが誇り高き現代人としての自尊心をもっているならば、

祖先への郷愁ではなくして、

むしろ輝かしい構想力に満ちた未来への現代的象徴または反映として、

民家を保存すべきであると考える。

そしてその保存法方はひとつである必要はない。

現在国指定の民家にたいして行われているように、復元も一法である。

但し百年以上も前の形式に復元された場合、

私たちはもはやそこに住めないという欠点はある。

第二は軸組と外観を生かし、造作工事の変更、仕上げの改善、

設備の現代化によって、民家を再生させ住みつづけながら誇りをもって

後世に伝えることである。第三は、手法としては第二と同様であるが、

博物館・旅館・店舗等に用途を変更し、リサイクルさせるものである。

それぞれの方式には特徴があり、私たちは選択をすればよいのであり、

ひとつの形式に固執する必要はないと思う。

 

・・・引用終わり)

 

 

心根さんはここでいう「第三の方式」で改修されたものです。

私たちはここで出来る限りの

「輝かしい構想力に満ちた未来への現代的象徴または反映」としての

仕事をしたつもりですが、

それが加えられることによって、

また民家はこれからも

「生きていく」ことができるようになるのだと思います。

 

 

この本のこの箇所は

古い家を直す仕事をするものにとって、

心励まされる熱きものを感じる文章でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 19:19 | - | - |
心根

 

届け物があって久しぶりに心根さんへ。

 

 

暮れの開店以来、

二ヶ月ほど経ちましたが、

早くも予約の取れにくい店になりつつあるようです・・!

 

 

テレビで放送されたこともありますが

何より、一度来られたお客様は

心根さんのおもてなしの心、

 

 

喜び楽しんでゆるりほぐれ

心の根っこによい水になるようにとの

「氣」のこめられた料理とおもてなしにまた

きっと逢いに戻ってきたくなるでしょうし、

 

 

誰か知り合いにもとっておきの場所として

連れて行きたいと思うに違いありません。

 

 

この二ヶ月ほどの間に

訪れた沢山の方がそうやって

よろこばれてきたからでしょうか

 

 

お店全体、人にも場にも

開店当初の緊張感が抜けて

やわらかな印象と

活き活きと動いているさまが

うかがえて、

 

 

嬉しく思いました。

 

 

 

道中、山の間を抜けていく道行きもまた楽し・・

 

京都縦貫道の篠インターを降りてR6で川沿いの道は

雑木の山間で春は桜に新緑、秋は紅葉を愛でつつ、

山の奥へ進んで行きます。

 

京都市内洛西からは、

途中に金蔵寺()という古寺を擁する

古い峠道をゆくルート(R733)もあり

− かなり細い道できついヘアピンが続きますが、

道中の森閑とした雰囲気や垣間見える市内、

峠を越えた所の森の雰囲気は静けさに満ちて素敵です。

休日は自転車や山歩きを楽しむ方もちらほら・・

上の写真はその峠を降りて京都側に降りてきたあたり・・

※対向車とのすれ違いもしにくいような細道なので

山道の運転にそれほど慣れていない方には

あまりおすすめではないかも、です −

 

高槻方面からは

やはりR6でこちらも山間の川沿いの道、

去年の台風で道沿いの木々が根こそぎ倒れてしまいましたが

近々、順に撤去していくそうです。

木立の続く山間を抜けて

樫田で明るく開けた里に出た時の印象も心弾みます。

途中の採石場の傍を抜ける時は

砂埃を避けて窓を閉めますが

あとは窓を開けて風を受けたくなるような景色です。

 

 

 

道中もおもてなしという心根さんへぜひ

予約の取れるうちに (^^)!

 

 

 

 

心根

大阪府高槻市中畑久保条15-1

072-691-6500

 

https://www.cocorone0309.com/

 

 

 

< 工事の様子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 06:49 | - | - |
竣工  ( 心根 古民家改修 12 )

 

 

家具作家の田中輝明さんの

手になるテーブルが搬入されてきました。

 

 

北海道産のいたやかえでに

柿渋とオイル拭きを施したもの。

 

 

椅子ともよく合っています。

 

 

南の間。テーブルが揃って

お客様を迎える準備が整ってきました。

 

 

 

 

店主・片山さんの学生時代からの友人で

カメラマンの原野純一さんが

竣工写真を撮ってくださいました。

繊細な美しい光をとらえる方で仕上がりが楽しみです。

 

 

グランドオープンを控えて

片山さんはじめ

スタッフの皆さんにも希望と新鮮な緊張感が漲ります。

 

 

大屋根の下、

明るく生まれ変わった深い軒が

お客様をゆったりと迎えてくれるでしょう。

 

 

12/3に

外構工事も一段落し、現場は一通り終了しました。

庭や蔵はまたこれからの楽しみに、少しずつ

整っていくことでしょう。

 

 

櫛谷建築の皆さま、

古い民家の手のかかる作業に加えて

地震や大雨、台風といった打ち続いた天災に、

法手続に伴う工事などなど、困難の続く工事でしたが

最後までゆるぎなく美しい丁寧な仕事で納めていただき

どうもありがとうございました。

 

現場監督の太田垣さんに去り際、

別れを惜しむ隣のおばあちゃんの様子を見て、

建物だけでなく周りの方々との関りも丁寧に整えて頂いたことを

感謝します。

 

 

生まれ変わったこの古民家は

心根さんの料理とおもてなしで

みなさまに感動とよろこびをもたらしてくれる場として

永く息づいていくことでしょう。

 

みなさまどうぞ山間のこの素敵な環境の中、

道中も楽しみながら、脚を運んでみてください。

きっとよろこんでいただけることと思います。

 

 

心根

〒569-1001

大阪府高槻市中畑久保条15番1

072-691-6500

 

https://www.cocorone0309.com/

 

 

 

・・おこしになる際には

お店のすぐそば、

中畑のバス停前にある氏神様の

大神宮社にもぜひお参りされてください。(

心根さんをここに導かれた、

食の神様 豊受気昆売神(とようけびめのかみ)が祀られる

小さな、清々しい気に満ちた神社です。

伊勢神宮の外宮にもお祀りされています。

今回の工事の間も

ずっと見守っていただいた感じがします。

 

 

 

森田建築設計事務所

森田 徹

 

 

 

 

 

 

 前回

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 09:11 | - | - |
現場より  ( 心根 古民家改修 11 )

 

師走も半ばを過ぎ

冬至となりました。

もうすぐクリスマス、

今年も残すところあと10日ほどです。

 

心根さんも

12/7にグランドオープンを迎えてから

もう早や2週間近くが過ぎました。

 

 

お店の方が実際に料理をし、

お客様へのおもてなしが始まって

場としてのいのちが息づいているのを

昨日、家族でうかがって、うれしく見せてもらいました。

 

直接、行って見て

心根さんの料理に感動して

場と合せて楽しんでいただければと思います。

 

 

で・・遅くなりましたが

現場報告をもう少し。

 

先月の末、

黒土間のおくどさんが

仕上がってきました。

 

 

朱の漆喰磨き仕上げ。

黒磨きタイルと黒土壁の中に

あかあかと映えます。

 

 

仕上げの朱漆喰磨きが

熱の影響で傷むことがないように、

火床の耐火煉瓦積みの外側に通気層を設け、

その外側にもう一度、レンガ積みして

それを下地に左官仕上げを施してあります。

火床内側は耐火モルタル塗り仕上。

通気は足元から入り、

火床上の鉄枠の下から抜けるようになっています。

かなり手の込んだ造りですが、その分、

磨き仕上は長くもつでしょう。

左官匠宮部さんと相談して造りを決め、

詳細図を起こしました。

 

 

釜をかける方の火床。

 

 

炭床側の火口。

鍛冶の宇根田さんに上の鉄枠と合せて

空気調整用の可動蓋を造ってもらいました。

 

煙や熱気は

元々ここの上部にあった

おくどさんのための煙り抜きの部分を利用しつつ、

換気扇を仕込んで排気できるようにしてあります。

 

 

仕上がったエントランス土間。

 

 

たたき風土間に

山石で円を描きました。

上がり段の手すりはこの家にあった鋤()。

 

北の間の客席。

 

 

壁付の照明器具が設置され、

窓には上げ下げ障子がはめられました。

桐板の壁とわびすけで古色付けされた柱梁、

そして、さわらへぎ板と檜で造られた唐棟天井が

清々しく光を映します。

 

この部屋は元々座敷の裏側で

煤で真っ黒になった低い天井に

巾の狭い開口がただ一つだけある

三方を壁に囲まれたナンドでした。

 

建物の北東角で開ければ澄んだ静かな光が入ります。

その光を美しく受けようと想ううちに、草案のスケッチの中に

「てりむくり」の唐棟(からむね)天井が現れてきました。

 

唐(から)という呼び名が付いていますが、

この形は、日本のおかれた状況の下で

想像と創造が満ちて生まれてきた日本独自のものです。

(このあたりのいきさつは立岩二郎氏の著書

『てりむくり』に詳しい。大変面白い一冊です。

 

構造補強のための水平構面で低く抑えられた窓際の天井が

室の内側で伸び上がるように膨らむさまと呼応する形

 

やさしく包み込みながらも閉じない自由さのある形

 

そして静謐な光に相応しく、

この場所や季節の恵み、農のいとなみ、いのちに感謝する

しつらえのできる雰囲気をもたらす形・・・

 

この室にはたらいていた見えないうごきが

この形をもたらしたとも言えそうです。

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 08:08 | - | - |
現場より ( 心根 古民家改修 10 )

 

明日から師走、気がつけば

もう今年も残すところ一月になりました。

 

現場の方はおかげさまで

外構工事をあと少し残して

無事に竣工しました。

12/7 には 心根さんはグランドオープンを迎えます。

年末、冬の始まりの澄んだ空気の中、

高槻・中畑の気持ちよい山ふところで

美味しいお食事を楽しんでいただけます。 ⇒ 心根さんHP

(心根さんのHPのトップページに

今しばらくは元の正面の姿の写真が出ています。

下の写真と見比べると

その変わりように驚かれるかもしれません・・)

 

現場からの報告は少しさかのぼりますが・・・

 

 

外構工事も進んできました。

アプローチの飛び石も据えられ、

砂利が敷かれてきました。

 

エントランス土間も仕上がりました

 

 

以前ご紹介した鋤は

正面の階段の手すりになりました。

 

 

円窓

少し欠けた円は

心根さんの料理で

丸く満たされることでしょう。

 

エントランスの根継した柱は

今回の工事の象徴です。

 

 

少し大きくつくった根継部は

又長い長い年月の後に

乾いて縮んで既存の柱のサイズと揃います。

 

 

黒土壁と黒タイルと黒鉄板のある

黒土間

 

おくどさんの仕上作業が進んでいます。

 

 

土塗りの上に漆喰磨き仕上の

下地塗りを施しています。

 

 

客席へ上がる階段と手すりの

色付けが施されました。

あとは来られたお客様の手で歳月を経て

仕上がっていくでしょう。

 

左手の収納引き出しと建具は

この家の造作で使われていたものを再利用したもの

 

 

想い出のシールと共に

親方の粋

 

厨房の中も整いました。

 

 

機器たちも始動を待っています。

 

 

外部にプロパンガスボンベも設置完了。

 

軒下に砂利が敷かれました。

 

 

白木の化粧軒天井、

木舞打垂木が連なる心地よい眺め

 

 

 

 

幾度となく通った峠道

この眺めともあと数度で

しばしのお別れ

 

 

数日後・・

 

 

椅子が搬入されてきました。

 

 

革張りの座の椅子と

籐編みの座の椅子は

どちらも肘掛がついて

ゆったりと座れます。

 

 

レジ周りに電話などが設置されました。

 

 

レジカウンターは欅の古材天板と同材の框組。

壁側にはおもたせが並びますので

漆喰パラリの白い壁としました。

 

この3つのペンダント照明は

店主片山さんと一緒に探した

アンティークの菊型のガラスシェード。

お店に行かれましたら、

どうぞその上の天井もご覧ください。

3灯とも吊り元もアンティークの菊型の陶製ローゼットで

揃えてあります!

 

 

外部では

駐車スペースの区画を示すコンクリートの工事が進みます。

 

 

 

 

< 前回    つづく >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 23:15 | - | - |
現場より ( 心根 古民家改修 9 )

 

竣工を目前に控え

現場では

熱の入った作業が続いています。

 

 

軒下に出来上がってきた

犬走り土間に映る

梅の影 

 

 

隅々まで

見違えるように生まれ変わった姿に

最初の姿を想い

胸が熱くなりました

 

 

レジカウンター周りは

元々この家にあった古建具で

構成されています 

 

 

仕上塗りを待つ

土塗りの終わったおくどさん

 

 

ワラスサ入りの黒土塗りで

壁の仕上がった黒土間

空磨きされた古い柱や梁は

引き締まったツヤを湛え 蘇った表情

 

 

煤竹格子の立ち並ぶ

黄土塗り円窓 

 

 

4種の木の染料で染められた

竹紙貼り壁の仕上がった床の間

枯れた舟板や栗古材とよく取り合っています

 

 

竣工までもう少し

現場の皆様よろしくお願いいたします

 

 

 

< 前回   つづく 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 18:48 | - | - |
現場より ( 心根 古民家改修 8 )

 

現場では

大工工事がようよう終盤に差し掛かってきました。

 

 

壁の左官下地ボードが張りあがっています。

何気なく納まっていますが、

戸が引き込まれるようになっていたり、

スイッチが隠されていたり、

色々手のかかったところ。

出来上がりはさりげないのが

もちろんよいです。

 

 

南客室の船底天井は

すす竹を張り詰めたものです。

 

 

壁が出来て

光を受ける面が出来てくると

その場のたたずまいが見えてきます。

 

 

塗装の色が

光の印象を又変えていきます。

 

 

 

かつての煙出しの辺りには

今回も厨房換気扇からの排気が出されました。

設備工事も仕込みは完了です。

 

 

庭に転がる沢山の石から

アプローチに使えそうな石を探します。

 

 

数日後・・

 

 

外構のアプローチに

先日、めぼしをつけておいた石を

店主・片山さんと一緒に並べて、見ます。

 

 

石の配置が見えたら

その辺りの仕上も決めていきます。

 

室内での

左官工事が始まっています。

 

 

まずは下塗りから。

大人数でかかると

あっという間に面が塗りつぶされ

印象が変わっていきます。

 

今日は厨房機器の搬入、設置もあります。

 

 

郡司製陶所制作の黒磨きタイルも

ほぼ貼り終わり、

厨房が出来上がってきました。

片山さんは出来上がって来た仕事場で

久々の厨房機器との再会に感慨深げでした。

 

 

南客席の壁面も下塗り中。

 

 

窓辺のたたずまいが次第に見えてきました。

 

 

新しく設けた化粧軒天井は

眺めを枠取りし、

窓辺に明るさをもたらします。

 

 

ここからは左官工事が進んで

日に日に現場の様子が変わっていきます。

完成までもう少し、

現場の皆さま、よろしくお願いいたします。

 

 

 

< 前回          つづく 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 19:17 | - | - |
現場より ( 心根 古民家改修 7 )

 

10月に入り、

おかげさまで

大きな山を越える事ができました。

感謝です。


 

現場も進み、

いよいよ仕上工程に入ってきました。

ここまでの様子を振り返ってみたいと思います。

 

 

台風ではこのような被害もありました。

 

 

修理の後、

現場は進行していきます。

 

 

厨房前のカウンターや

周囲の壁下地が姿を現してきました。

受け止める面が出来て、

煙出しの高窓からの光が生きてきます。

 

 

空調設備を仕込んでいます。

 

 

機器本体は大屋根下の屋根裏に納め、

そこからダクトで各室に送ります。

 

手前、南の客室では

造作と天井が進んでいます。

奥の北の小間でも天井の作業が始まっています。

 

 

北の小間は

てりむくりのある唐棟天井になります。

曲線の垂木が並んでいます。

 

 

唐棟妻壁の空調吹き出し口。

寸法的にはなかなかタイトでしたが、

チャンバーボックスなどうまく納めてくれました!

 

南の客室では・・

 

 

床の間が姿を現してきました。

栗、松、杉の舟板などの古材を組み合わせて

造りましたが、

よく馴染んで一体のものになった感があります。

 

カウンター客席は

垂れ壁と天井下地が出来て

空間のボリュームが生まれました。

 

 

・・落ち着いた席になりそうです。

 

正面の大きな横長の窓は

店主・片山さんが立ちはたらく背景になります。

緑と光を導きいれるピクチャーウィンドウですが

このサイズ・形状のまま、

窓が開くように仕掛けを考えています。

 

 

それから数日後・・

 

 

土間に埋め込む石を仮置きしていきます。

これらの石も柱の下の石も全て

元々ここの家で使われていたり、

敷地にあったものを選びました。

 

 

造作が進んでいます。

 

 

お!

思わず手を触れたくなるような・・・

 

・・階段ができてきました!

 

 

土間から客席へと上がる階段です。

これから料理を頂くにあたって、

気持ちの高揚するような

なんだか楽しくなるような

手すりになればと思いました。

お客様、皆に触られて、

つるつるぴかぴかに

なってくれたらいいなと思います。

 

本歌は駒場にある

日本民藝館の大階段の手すりなのですが、

櫛谷さんの手になって、

図面で描いていたときより

雰囲気のあるものに仕上がったようです。

 

この階段を上がるのはなかなか楽しい・・

 

 

そして、

さらに奥の部屋では・・

 

 

北小間の

唐棟天井が出来上がってきました。

さわらのへぎ板が美しい光沢を見せています。

 

 

壁には桐板が張られていきます。

 

北の部屋なので

静かに明るく落ち着いた場になっていきます。

 

 

その間に

南客席の床の間の壁面に貼られる

竹紙が出来上がってきました。

 

 

檜、杉、楠、そよごと

四種の木からとった染料で染めたもの。

 

自然な色合いから感じるのは

色というよりは微細な波動

心身がゆるみくつろぎ

やすらいでいくように感じます。

 

竹を伐ってから

四度の星霜と数々の工程を経て

生まれた表情です。

話を聴いていると

あの硬く青々とした竹から

ここまでに至るには

本当に惜しみない多くの手作業と

発酵などの作用がはたらいているのがわかりました。

とても貴いものだと感じます。

 

枚方の竹紙作家

田上武子さんの手になるものです。

(実は久美のお母さんです)

 

 

それから数日後・・
 

 

エントランス正面の十六夜窓から。

黙々とはたらく現場の人・・

 

仕上工程が進んでいます。

厨房の壁面に

黒タイルが貼られてきました。

 

 

手で一枚一枚、

作られ、磨かれた黒タイルは

独特のむっくりとした厚みと

やわらかな雰囲気を湛えています。

 

 

益子の郡司製陶所の手になるもの。

 

そういえば、

郡司さんにはこの計画の始まった頃に、

なにかここの参考に、と閃いて

日光と中禅寺湖を廻る旅に出た際に大変お世話になったのでした。

あの時見たり感じたりしたなにごとかは

ここに繋がっているのだと思います。

 

エントランスから客席への

もう一つの階段。

 

 

古材で巡り逢った肥松の段板。

齢経て、材になってもなお

染み出す脂のつややかさ。

 

 

様々な表情の要素が

集まって、

新しい場が出来つつあります。

 

 

 

 前回   つづく 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 20:09 | - | - |
現場より ( 心根 古民家改修 6 )

 

台風21号から1週間、

ようやく

高槻市街地から現場への道が開通しました。

 

ちょうどその道を通る機会があったのですが・・

 

 

なんか一瞬よくわからないのですが、

これ、全部風でなぎ倒された木々です。

植林された杉や桧。

まるでつまようじみたいに倒れていました・・

恐るべし自然の力。

一方で、一山越えると何とも無いところもあったり、

風道に当たったところが容赦なくやられたような印象です。

多分道路の上もかなり木々が散乱して

相当カオスな状況だったと思います。

復旧作業の皆様ご苦労様です。

よくここまで復旧したなと思いますが

山を見ているとまだまだ作業は沢山ありそうです・・・。

 

 

現場はおかげさまで無事でした。

お隣の山の木々が同じように倒れましたが

幸い近辺の人家にも被害は無く、

ただしばらく断水状態になったのが大変だったと思います。

 

現場も台風補修対応で皆しばらく追われていました。

それでも屋根屋さんや足場屋さんは

今もまだ忙しい状況がずっと続いているようです・・

 

 

少しずつ又元のペースに戻りつつある現場・・

 

 

化粧軒天井の化粧垂木が設置されてきました。

 

 

板張りで生まれた

明るくすっきりした雰囲気に加えて

落ち着きとリズム感、

そして端正さがもたらされたようです。

 

 

垂木と小舞の組み合わせは

清々しい軽やかさも湛えていて、とても好きな形です。

垂木は猿頬に面をとって、光を受ける面を多様にしています。

 

 

室内の造作も進んでいます・・

 

 

壁の切り替わる箇所。

 

搬入された古材を

組み合わせてどのように使うか検討していきます。

これは栗古材の框に松板の組み合わせ。

 

 

場に置いてものを見て決めていくと

そこから必然の新しい形・意匠が生まれてきたりします。

材料と場所と行為に沿って生まれてくるかたち・・

そこに立ち会うのは面白い時間です。

 

厨房・・・

奥の壁面に光の当たっている前が

店主の片山さんが立たれるところです。

 

 

厨房は様々な設備や機器が集中してくるので

色々と気を遣うところです。

天井内や土間、壁の中など見えないところに

様々な設備機器や配管が仕込まれてれています。

 

ここの厨房は

それぞれの作業に応じて、

造作される場の雰囲気を少しずつ変化させてあり、

お店の方が働いている姿が

きっと美しく見えると思います。

 

 

厨房前からエントランス方向を見たところ

 

元からあった架構の部分に

新しい部材が付け加えられて

違う場に生まれ変わっていく様子

 

まだまだ沢山の作業が重ねられて

新たな場が生まれていきます。

 

 

 前回    つづく 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 『 心根 − 高槻の古民家 』 | 17:51 | - | - |
現場より ( 心根 古民家改修 5)

 

しばらく間が空きましたが

その間、酷暑の夏に

台風21号や北海道での地震と天災が続いて

気持ちが落ち着く間もありません。

これ以上の被害が広がらないことを祈ります。

 

今はこの台風のために現場へ続く全ての道路が

通行止め状態です。

何より現場周囲の集落の方々の生活道路でもあるので、

早い復旧を望みます。

 

 

台風までの現場では・・

 

 

構造補強が大方終了し、設備の工事が始まりました。

 

 

店内に新設されるエアコンの配管を設置。

 

 

新旧の部材が組み合わさって

躯体がしっかりとしました。

 

 

化粧軒天井のための下地が進んでいます。

 

数日後・・

 

 

今日もよく晴れて暑い一日です。

 

 

化粧軒天井の板張りが始まりました。二人一組で

板を一枚一枚合わせ、

欠き込み部などを確認して張り進んでいきます。

 

 

この日、

軽トラに荷物と道具を積んで

臼杵さんが香川からやってきてくれました。

 

 

現場のお隣の倉庫を借りて

カウンターの天板に漆塗りの作業を始めます。

 

 

心根さんが

枚方の店舗で10年間使っていた栃のカウンター。

製材してウレタン塗装を剥がし、

拭き漆で新たに仕上げます。

 

 

まずは1回塗り。

へらをつかって薄く延ばしながら塗りこんでいき、

温度と湿度のある中で漆を硬化させて、しばらく日を開けてから

再度重ね塗りして仕上げます。

 

 

 

合わせて

この舟板にも漆を施してもらいます。

文字通り、舟の一部だった板は

水に洗われ、長い時を経て、柔らかい部分が無くなり、

枯れて木目が浮き立ち、艶消しの光沢を放ちます。

最後に一つ一つ丁寧に手で磨いてこの表情が生まれます。

今回、客席の中でも大切な場所に使われます。

 

その間に現場では・・

 

 

化粧軒天井の板が張り進みました。

杉の白太の板が

日光を明るく反射させて屋内に導き入れています。

 

 

数日後・・

 

漆塗りの塗り重ねが終了しました。

 

 

このまましばらくこの倉庫内で寝かせます。

1ヶ月程度は開けないと

皮膚の弱い人はかぶれることもあるそうです。

 

現場では

玄関部分が形を現し、表情が生まれてきました。

 

 

元々、この左側に玄関があったのですが、

実測調査中に出入りしていても

なんとなく落ち着かない感じがあり、

計画をプランしている最中に方位を確認してみると、

ちょうどそこは裏キモンに当たる場所。

そこで玄関を右へずらしてプランし始めると、

たちまち新たな平面が立ち現れてきました。

 

家は基本的に

住む人のお役に立ちたいと思っているはずですが、

意に反して住まいする人に

よくない影響をも与えてしまうことに

遺憾な想いがずっとあったのかもしれません。

 

何かがするするとほどけて

一新されていくかのように新たな場が立ち現れてきたのには

家がその遺憾さから開放されるよろこびも

後押ししていたのかなと、そんな印象がありました。

 

 

数日後・・雨降る現場

 

 

化粧軒天井の仕上げが進行し、

壁面の左官下地が始まっています。

 

 

内部では

造作の壁が立ち上がり・・

 

 

そこに穿たれた窓から周囲の緑が

生き生きと入り込んできます。

そのように感じられる、場所との新たな関わり。

 

 

蔵の中にあった鋤。

木の柄に鉄がついた古い形のものです。

 

 

鉄の部分は錆付いていましたが

鍛冶屋の宇根田さんに頼んで蜜蝋を焼き付けてもらいました。

 

 

錆付いた表情が

美しく古びた風情を醸しています。

鋤の原形は焼畑農業でも使われるくらい、

原初的な農具でもあり、また

すき焼は元々畑で、

この鉄の上で料理をしたところから生まれたそうです。

 

 

(摂理にそって)農作物をつくることで土を作り、

大きく見れば地球環境を整えている農家さんを応援するためにも、

その側である、

(料理の素材になる)農作物の生まれるところに行って、

料理をしたいという心根店主 片山さんの想いを

どこか象徴するような農具です。

 

このお店でも

そのようなことを来られるお客様の

無意識にそっと語りかけるように使いたいと

考えています。

 

 

 

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