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昨年の暮れに無事に竣工し、
お引き渡しすることができました。
施主施工の壁面和紙貼り部分を
一部残していますが、一通り完成です。
櫛谷建築の皆さん、ごくろうさまでした。
手のかかる作業の多い仕事でしたが、
最後まで丁寧に造っていただき、
どうもありがとうございました。
工事前(before )と竣工後(after)を
見比べつつ、全体を振り返ってみたいと思います。
【1階廊下】
中廊下でありながら、
L字型に座敷二間を囲むように配置された廊下が
印象的で、改修後もそれは変わっていません。
各部屋への開口部の大きさや形状が変わり、
傷んでいた床・天井の仕上げが変わりました。
before
after
左手階段下収納は襖から目板格子戸に、
右手は障子から筬格子戸に変わりました。
以前は少なかった壁も増やして、構造補強されています。
正面の壁面への側面からの光は以前から変わらず印象的です。
ここの壁面はあとから和紙貼りで仕上られます。
【1階DK】
元はタイル貼りの流しや吊り戸棚が風情のある厨房でした。
後から増築されたらしい南側のダイニング部分は
屋根の形状・納まりに不具合があり、
構造補強も兼ねてこの部分を大きく改修しました。
before
タイル貼りの流しはかわいいのですが
使いづらかったようで、右側に新設のシステムキッチンがありました。
左手に勝手口がありました。
三方の垂れ壁には
吊り戸棚がありました。今回、建具を再利用しています。
【南側ダイニング】
かつてはここにお風呂があったようで、
複数回の増改築の痕跡があった場所です。
周囲を家に囲まれた中では、
最も奥行きのある庭に面した南側なので、
1階の部屋では一番日当たりがよい場所でした。
after
ステンレス天板のキッチンを新設し、
吊り戸棚を2面に再生しました。
中央にはカウンターを新設。
カウンター天板には
座敷で使われていた栃の無垢板を再利用しました。
元のダイニングとの境は
梁をかけなおして既存柱を撤去。
キッチン寄りにカウンターを設置して、
空間を繋いで広げました。
勝手口だったところにはガラス戸入りの収納を設置。
柱がなくなったので、
カウンターの手前、天井が低くなった部分に
ダイニングテーブルを置けます。
元ダイニングの上は
ガラス屋根に架け直して、
2階の部屋と繋がる吹き抜けにしました。
ダイニング部分をキッチンと繋ぐことができたので
ここはソファを置いてくつろげるスペースになりました。
庭の緑を見ながらの食事ができ、
たっぷりの自然光に満ちて高さもある、
気持ち伸びやかになる空間です。
ガラス屋根下には
取り外し式のスダレ建具をつけてあるので、
夏場の日射をある程度防ぐことが出来ます。
【階段】
古い家に多い、勾配の急な階段でした。
1階の床を一部上げ、勾配もゆるくしました。
before
2階からの見下ろし。1階は玄関の2帖の間です。
after
1階の1帖分の床を上げました。床板は松の古材。
階段の上に新たな開口を設けて、自然光を導きいれています。
閉塞感がなくなって、光と気が廻ります。
【1階座敷 → アトリエ】
元々二間続きの座敷でしたが、
以前の改修で北側の部屋は板の間になり、
半分のスペースにユニットバスとトイレ・洗面が設置されていました。
座敷はそれなりに趣のある造りでしたが、
開口を二面に広く取りすぎていたために
隅柱に荷重が集中し、沈下していました。
同様に廊下の続きの内縁も柱が少なすぎて上部が下っており、
又開口高さがありすぎて、周囲の家の開口と重なって
お互いの視線が気になる状況でした。
before
南側座敷から庭を見たところ。
正面に2間の開口がありました。右端が沈下していた柱。
同座敷から西側を見たところ。
こちらも当初は2間の開口があったようですが、
後から開口の中央に補強柱を立てて右半分を壁にしてありました。
【続きの間】
左手が水周りの入った部分。
元ダイニングが日当たりがよかったので、
お風呂をこちらに移したようですが、
座敷との繋がりが無いスペースになっていました。
after
元の続きの間から南側を見たところ。
二室を繋いでアトリエに、というご希望があったので、
水周りを移動して、スペースを空けました。
正面内縁の開口は高さを下げたので、
隣家の開口が見えなくなり、
視線は自然に庭の緑に導かれるようになりました。
緑の背景には既存板塀を造り直して、焼き杉板の板塀を設置しました。
南側の2間の開口は少し狭くして、隅柱は太い柱に差し換えました。
左手の元の床の間だった箇所に壁を設け、そちら側をトイレにしました。
西側も開口幅は狭めましたが、引き込み障子なので全開放出来ます。
南側の障子は外して収納できる場所を設けたので
こちらも全開放が可能です。
障子は両面に和紙を張った太鼓張り障子。床はわびすけ塗り。
ここの壁は施主施工の和紙貼りになります。
【2階寝室】
元は押入れ付の4帖半和室でした。
当初、収納にする話もあったのですが、
それにはもったいないほどの日当たりのよさだったので、
こじんまりとした居室にする方がよいと考えました。
before
after
押入れを撤去して、
奥にハーフユニットの浴室を設置、手前を寝室に。
問題のあった屋根をガラス屋根に架け替え、
吹き抜けを介して1階と繋がるようにしました。
西側の部屋ですがガラス屋根を介して
朝日が射し込んで、壁を明るくしています。
吹き抜け側にはベンチを設け、洗面も設けました。
ベンチの上には障子が設けてあって、
吹き抜け側を閉じることも出来ます。
ガラス屋根のすだれ建具はここからつけ外し可能。
1階の開口部とこの部屋の北側の窓を介し、
温度差による自然通風で
換気出来るようになっています。
【2階和室】
元々造りのよい座敷でしたので
ここは原形のまま残そうということになっていました。
ですが、下階柱が沈んだ影響で床がかなり歪んでいました。
before
<床の間周り>
ほとんどこのままの形ですが、
今回、耐力壁にしたため書院がなくなりました。
また、壁仕上げは漆喰コテ押さえから白土塗りに変えました。
<南および東開口部>
内縁の外部開口は南、東ともに2間半あり、
かなり垂れ下がってしまっていたようで、
鴨居下に補強束が立っていました。
また、
かつてはここから賀茂川や比叡山、
送り火の大文字などが見えたようですが、
今では周囲に建てこんだ家の開口と重なって、
双方の視線がぶつかって気になる状態を生んでいました。
after
<床の間周り>
白土塗り仕上げに変って、
少し雰囲気が柔らかくなりました。
<南および東開口部>
東側は開口幅を半分にして収納を設けました。
畳を交換し、雨漏りで傷んでいた天井板を新しくしました。
竿縁、周り縁はもとのままです。
内縁外側は柱を立て直して、
軒桁をきちんと受けられる架構にあらためました。
開口高さも低くし、
幅広の上げ下げ障子を設置して
隣家開口からの視線とぶつからないようにしました。
無意識のうちに気になっていたことがなくなり、
障子越しの光もやわらかく、雰囲気が随分落ち着いて、
居心地のよい場所になりました。
架構をあらためたことで、
沈んでいた床などは元通りに戻りました。
【2階続きの間】
こちらも開口の正面に隣家のベランダがあって、
双方開放しきれない状態でした。
入母屋屋根の隅などから雨漏りして
一部天井に傷んだ跡がありました。
before
after
和室から板の間に。
外部開口も絞り込んで
隣家開口と位置をずらしました。
天井を取り払い、屋根勾配なりのラワン合板張り。
屋根上のテラスへ続く階段を設置。
地回りに補強梁、火打ち梁などを設置しました。
座敷との間は壁を設置。
ある程度の通風が出来るように無双格子入りの建具を
はめこんであります。
にじり口のような戸をあけると空の下、
屋上テラスへ。
ここからは比叡山や送り火も見えます。
かつて、
この家が工夫を重ねて
開口を大きくとって得ていた眺めは
周囲の環境の変化で失われましたが、
ここで形を変え、あらためて眺めが得られました。
それは同時に、
この家がかつて見た夢を
また新たな形で引き継ぐことのような気がします。
今回新しく生まれた夢とともに。
それは、別の言葉にすると
家を生きさせる いのち、とも言えるのかもしれません・・。
【外部】
大きく印象が変わったのはDKの外部と南側でしょうか。
<DK外部>
before
多分、以前の増築によるものと思いますが、
屋根のかかり方がおかしなことになっていました。
after
屋根を整理して2階の窓前までの片流れに。
天窓を設けて1階と2階への採光に。
<南側>
before
開口を大きく取りすぎたための軒の垂れと
その補強の添え柱が外部に付けられていました。
柱を建て直して、
周囲の窓とかちあわないように開口を整理し、
無理のあった庇はなくしました。
・・そういえば、
お引き渡しの日は、
ちょうど一年前、お施主様がうちの事務所に
初めて訪ねてこられた、まさにその日でした。
不思議な偶然、ですが、
何か大きな流れにのって、
こと や 場 が出来上がり、成就するときには、
それがこのように意味や縁のある日に重なったりするような、
しるし のようなものが顕れることが多いように思います。
この家での
新しい生活が活き活きとして、
楽しみと喜びに満ちたものになりますように。
< 前回
現場では
先週末、とうとう外部の足場が外れました。
外観が姿を現してきました。
ガルバリウム鋼板小波板に覆われた外壁。
天窓のついた屋根。
以前、傷んでいた外壁や屋根・庇、柱などが
改修によってしっかりと直りました。
空に向ってすっくと立ち上がる姿に
不安げなところはもうありません。
庭に向う開口。
靴脱ぎ石などはこのあと据え直していきます。
内部では
建具の立て合わせが進んでいます。
ここのために選ばれてきた
古建具がところを得て、
活き活きとした姿に変わっていきます。
正面にはまっているのは
この家で元々使われていたらんまのガラス建具。
左手は引き違いの格子戸を
一本溝に2枚並べた片引き込み戸として使用。
新しく作った建具もあります。
白木の障子や庭に面したガラス戸、小建具など。
こちらにちらりと見えるのは古建具の筬格子戸。
左手、縦長の古材板の部分は
内縁に面した障子を外したときに
仕舞っておく収納。
2階内縁の外部開口には
上と下に引き分ける
上げ下げ障子が付きました。まだ紙を貼っていませんが・・。
外側にはすだれ掛けも設置してあります。
周囲開口との目線のコントロールと光の調整がこれで
十分行えるはずです。
階段には
開口を新たに設けて光を導きいれました。
造作工事の完了した2階の部屋。
ベンチと洗面台も出来上がり。
吹き抜け側に障子がはめられています。
造作が完了して
こちらもこれから塗装が進んでいきます。
既存壁と新設壁の組み合わせ。
新しい階段の導く場所は・・
上がった先にある小窓をあけると
そこには正面に比叡のお山がおわします。
外部では
アプローチの左官仕上工事が始まりました。
数日後・・
マサ土を固めた土間仕上が完了していました。
玄関内部も同じ仕上です。
玄関には亀甲網入りガラスの古建具が入りました。
式台は古材の松板。
厨房も設置がほぼ仕上がってきました。
ステンレス天板のキッチンカウンター
壁面は亜鉛めっき鋼板張り
上部の吊り戸棚は
既存吊り戸棚の建具を再利用して再生したもの。
正面は古建具の2枚引き違いのガラス入り筬格子戸。
2階では
床のわびすけ塗装が完了しています。
足元がしまって
場が落ち着きました。
あとは電気器具類の取り付けなど、
仕上の作業がもう少し続きます。
今週末にはいよいよ竣工、引渡しの予定です。
櫛谷建築さん、よろしくお願いいたします。
前回に引き続き、現場の様子です。
2階の和室
壁の塗りなおしのため
既存の壁仕上げをはがしています。
床の傾きが元に戻ったので、
傾いてから塗っていたところはぶつかって
割れてきました。その補修も兼ねています。
既存丸太梁をかわして設置した
屋上テラスの床組と補強梁。
耐震補強の壁を構成する柱も入っています。
1階作業場
壁面は構造用合板仕上げ。
ここは仕上がってきました。
内縁の廊下。壁下地組み中。
壁が出来て開口高さの変化が見えてきます。
数日後・・
室内の壁下地が張りあがってきました。
ここは施主施工のラオスの手すき紙貼り仕上。
内縁の廊下も壁下地ボード張り完了。
天窓のガラスが入り・・・
・・方杖造作も進行中。姿が見えてきました。
サッシが設置され,
外壁のガルバリウム鋼板小波板、施工中。
色は藍色のような濃い目のブルー。
ここでなされる服作りに因んで、
藍染を想わせるように。
正面のサッシは既存の移設再利用。
使えるものはなるべく再利用しています。
玄関に移設した既存天井板。
うまくはまった(拍手!)ので移設したように見えませんね。
2階では・・
屋根裏で見えなかった妻壁も室内になります。
屋根の下には断熱材を設置し、勾配なりに天井を張って、
吹き抜けになります。
左側は補修されている和室。
棹縁が見えているので
隣室の新しい天井との高低差がよくわかります。
実測の時にはこの小屋裏は暗闇の中でした・・・。(⇒)
天井はラワンベニヤの底目地張り・・
丸太梁が絡んでくるので、
板を梁に沿ってひかりつけています。
なかなか手のかかるところ・・
目地が通ってきれいな天井。
空間が全く違った印象になっていきます。
屋上テラスは腰壁に杉板が張られました。
ほとんど節が無くてすっきりとした印象。
雨除けのシート養生が
垂木のしなりで光を透過する
曲面屋根になっていて面白いです。
右側が新設の階段裏で
壁に残っているのは既存階段の跡。
勾配が随分緩くなったのがわかります。
数日後・・
土壁の下塗りが終わっています。
メッシュが貼り込まれて
割れにくい丈夫な壁になっていそうです。
和室から見える隣室の様子。
和室棹縁天井の上には
屋上テラスが隠されています。
壁面施工中。こちらは桐パネル。
天井と合わせて目地を通します。
丸太梁をひかりつけています。
屋上テラスへの階段が設置され、
壁面下地を施工中の櫛谷建築のひろくん。
どこも手の抜けない場所の連続と
大分押し気味の工期にお疲れ気味・・
おつかれさまです!
数日後・・
外壁がほぼ張りあがってきました。
大きな面で連続する
小波板はなかなかきれいです。
ここは入母屋屋根を切妻に直し、
中央に見える屋上テラスが出来たところです。
和室の天井が張りあがりました。
内縁外側の開口は
1階同様に開口高さを低くして
隣家開口との目線がぶつからないようにしています。
2階開口にはもうひとつ工夫がしてあります・・。
こちらにはベンチが出来上がりました。
わびすけの着色も終わっています。
屋根上の養生も外れてきました。
木部は塗装が終わって左官の仕上げを待ちます。
数日後・・
左官の仕上作業が始まっています。
外壁しっくい塗。
玄関周り。
階段部分もしっくい塗仕上。
養生をして漆喰仕上中。
人数が入って一時に仕上ていきます。
吹き抜け部。
壁面が仕上がってひとまとまりの印象に。
壁の白漆喰と藍小波板のとりあい。
納まりのあらたまった
天窓屋根と小波板の外壁。
以前のままなのは大屋根破風板とその瓦。
仕上の白土塗の終わった2階和室から内縁。
床の間廻りも完了。
落ち着きがよみがえってきました。
隣室との間には壁の一部に
古建具の無双格子戸をはめこんで
南北の通風に活かします。
ベンチの横には洗面台が造作されました。
和室の隣・・
壁面が張り終わり、木部の塗装が完了。
左手が無双格子戸付の和室との境壁。
屋上テラスへの階段。
梁をひかりつける箇所は壁面にもありました。
ごくろうさまです。対比が美しい。
天へ続く階段。
壁も張りあがって、見違えるような場になりました。
ようやく終わりの見えてきた現場。
今月半ばにいよいよ竣工引渡しになります。
もう一息、櫛谷建築の皆さん、
よろしくお願いいたします。
前回に引き続き、現場の様子です。
サンルーム架構が出来てきています。
方杖で斜めにせり出した部分を
2階から使えるようにします。
ハーフユニットが設置され・・
そこからの配管も設置されました。
傷んだ丸太柱の根継材加工中。
無事に根継完了。合わせるのが難しいのですが・・
ごくろうさまです。
方杖も設置されました。
1階床下への断熱材を設置中。
お施主さんがラオスから調達してきた手漉き和紙。
厚さはまちまちですが、繊維の質感が面白いです。
これを壁仕上げとして貼ります。
一方、新たに設置する古建具の選定が完了。
サイズや形状が合うものはなかなか一度には揃いませんが、
必要な機能を満たすような建具が今回も色々見つかりました。
10月に入り、
予想外の長雨に予定がずれこんできました・・
天候の合間をぬうように、補強梁の設置などと合わせて
2階大屋根の改装を行っていきます。
屋根を一部、切り欠いて・・・
フラットな場を造ります・・
新たな場が生まれてくることで
今まで見ることのなかった景色も見えてきます・・
左手に見えるのは既存の妻壁。
小舞への裏返し塗もなくて結構手薄な感じ、でした。
数日後・・
外壁の下地を施工中。
構造補強も兼ねています。
土壁が残っている箇所も多々あるので、
柱・壁の外側に断熱材を設置します。
2階小屋梁を補強しています。
既存土壁では上部に梁がなかった箇所もあり、
梁桁間の構面をしっかりさせる意味でも
梁や火打ちを設置しました。
大屋根に開いた
天への開口
空を仰ぐ場・・そして
比叡山が見えるように・・・
かつて、
この家が建ったころに
2階の窓からでもよく見えたであろう景色が
再び見えるようになりました。
そもそもこの家が構造的に色々な工夫(や無理も)をして、
開口を沢山設けようとした眺め。
勿論、家が沢山建て込んで、
当時と全く同じ、というわけではないのですが、
この家が見ていた失われた夢が、
形を変えて再び戻ってきたような感慨とともに、
しばしこの景色を眺めたのでした。
前回に引き続いて
9月後半からの現場の様子です。
多くの部材が搬入され、
現場にあわせて加工されています。
下屋根の架け直し中。
垂木にはわびすけを先塗しています。
継ぎ足した桁を受ける方杖。
vesica piscis を基に形状を導き出しました。
1階床下地が出来、
2階の既存床下地と合わさって空間が出来てきました。
正面の開口もほぼ見えてきました。
その直上の2階。下と同様の開口。
入母屋の屋根形状を変更するにあたって、
梁を受ける新設柱も入ったのではねぎをカットします。
母屋からの荷重を受けて、それなりに効いていたようでした。
1階の前回添え柱を入れたところ。
足固めと床下地を組み始めています。
2階床面が出来てきて配管工事も始まっています。
その上では、既存で納まりがおかしくなっていた屋根形状を改めて
架け直しています。登り梁を受ける方杖。
周囲を建物に囲まれていますが、ここだけは庭に面して
南からの光が入る空きがあるので
それを利用するために
吹き抜けを設け、ガラス屋根を架けます。
既存土台に絡む新設柱、足固め。
昭和初期のアンカーボルトと布基礎。
・・工事は続きます。
しばらく現場リポートができませんでしたが、
来月の竣工を控え、現場は進行しています。
途中、なかなか見ごたえのある工事箇所も多数ありました。
古い家ゆえの予期せぬ傷みや歪みなども多々ある中、
新たな姿に向けて、
着実に作業を進めていただいています。
現場の皆さん、ごくろうさまです。
ここまでの流れをざっと追ってみます。
9月 床下地組み作業
柱間脚元に足固めを入れ、
その間に床下地になる大引きを入れていきます。
足固めで柱同士が繋がると軸組みがしっかりしてきます。
新設柱も全体に組み込まれていきます。
足固めが一部上がって巾木のように化粧になる部分。
床板の入る溝が突かれています。
柱は面取りされていて、足固めはその中に納まっていきます。
元は梁が切れていた部分も
添え梁と新設柱で繋げられました。
このあと、奥の方の軸組みの補強が始まっていきます。
数日後・・
脚元が焼け焦げ、傷んでいた柱に添え柱が立ちました。
上方には差鴨居も入れてあります。
既存柱は傷んだ箇所に根継ぎが施されています。
2階床梁も設置されてきました。
床レベルを変えるために梁天レベルを変えています。
トイレになる部分の土壁に新しい開口を設けました。
下地の貫を切らない位置、サイズに調整しました。
既存で庇がおりかねで回っていたところ。
既存庇が傷んでいたのと軸組みをやり変えたので、
庇をここで止めて切妻に形状を変更。桁を伸ばします。
玄関入って正面。
新設の柱をたて、足固め、差鴨居を入れています。
手前の足固めは化粧になって見えてきます。
なかなか手のかかるところです。
足固めが上がった分は床が上がります。
続きます・・。
現場では軸組みの差し換えと新設の
工事が進んでいます。
主だった差し替え柱はほぼ建ったようです。
合わせて足固めの設置も進んでいます。
軸組み同士が繋がってきました。
そして・・・
前回2本たっていた
南側の軸組の通し柱4本が全て建ちました!
2階から見たところ。
梁に直に張られる床板にあわせて
柱に欠き込みがされています。
上に見える横架材は差鴨居。
ここの開口内法高さは少し低めに設定しています。
差鴨居の上は壁に、下は開口に。
開口部には床から低めの腰壁もつきます。
和室内側より。
開口の高さを低くしたのは隣家の家の窓と
視線がぶつからないようにするためですが、
ここでは開口部にもう一工夫してあります。
できてくるのが楽しみなところ・・・。
柱が4本建ち、軸組みが出来たところで
ワイヤーで引っ張ると沈んでいた分が戻って、
立ちもほぼ元通りになりました。
大きなヤマを一つ越えたようです。ご苦労様です。
差し換えた柱の上の既存柱を見上げると
随分反っています。
以前、荷重が集中していた為かそんな柱が数本ありました。
納まりなどに問題になる箇所は新しいものに差し換えます。
以前、軸組みの通りが途切れていたところに
梁を設置中。
足固め。
四方差になるようなところはレベルを変えて、
上がった方はそのまま化粧として見せるようにしてあります。
大屋根の見上げ。
小屋束の転びも直せるといいですが・・。
この部分は納まり上、雨に対して弱点になっていた
左手の入母屋屋根を切妻屋根に変更し、
大屋根側にも新しい仕掛けを設けます。
ここも出来上がりの楽しみなところ。
台風の万が一に備えて、屋根瓦が飛ばされないように
親方自ら処置をしに来てくれていました。
軸組みは大きな差し替えが済んで安定したところなので一安心です。
櫛谷建築の皆さん、ご苦労様です。
引き続きよろしくお願いいたします。
大まかな調整のあとで
補強基礎の工事に入ります。
既存の布基礎は無筋コンクリート。
まずそこに根入れして補強します。
主に2階部分の下で外周周りに設置されていて、
それまでの石場立て造りのかずら石の代わりのような
感覚で使われていたように見えます。
割れていた基礎もこれで補強されます。
引き続き、配筋。
地中梁になる根入部のスパンが大きいので
ピッチを細かくしてあります。
既存基礎の上にスラブを造ります。
柱脚部は一度スラブ内に飲み込んで、
後からスラブ上でカットします。
アンカーボルトを設置中。
配筋工事が完了し、お盆前にコンクリート打設。
敷地の前に車をつけるスペースがないため、
一輪車の人海戦術でコンクリートを運んで打ちました。
暑い中、ごくろうさまでした。
無事にコンクリートを打ち終えた現場。
少し間を空けて、
工場で加工した新設や交換の部材が
搬入されてきました。
スラブ上でカットした柱。
下に石を敷きこんであります。
左手に見えるのは5寸の通し柱。
正面の軒桁下の元は大開口だった部分に入ります。
桁に刺さるほぞ部分。
現場で既存部材とのすり合わせができるように、
余裕をみた寸法でつくってあります。
左側の大屋根の軒桁にこれらの柱が立ってささります。
桁下にも新しい柱の仕口の加工をしなければなりません。
残してあった桁下の垂れ壁や袖壁の土壁を落とし、
準備に入っていきます。
それから数日後・・
通し柱が立ち上がりました!
スパン中央の二本です。
今回も開口にはなるのですが、
5寸角にした柱と、
その柱間には差鴨居や胴差と小壁、そして
足固めなどを連続で設置し、
耐力的に補強になるようにしています。
立ち上がった二本の通し柱。
この部分の残りの柱が立ったところで
全体を引っ張って傾きを直します。
上からの荷重を一身に受けて沈んでいた柱は
1階部分を大きなものに差し換えました。
小屋裏の見上げ。
中央の丸太梁を軒桁の手前にかけた丸太梁で受けて、
軒桁を吊り上げるのは瓦葺のような重い屋根でなければ、
後で下ることもなくそれなりに成功したのかもしれません。
今は上の瓦を下ろしてあるので、
差し換えの最中も割合簡単なサポートで
支えることが出来ていました。
その分の荷重が上の写真の柱に集中していたのですが、
今回の一連の差し替えで負担は大分変わると思います。
2階に上がって見たところ。
奥にお隣の物干しが見えています。
周囲の家に囲まれ、お互いの開口位置が被ってしまって、双方ともに
気持ちよく窓を開け放したりすることが出来にくい状況になっています。
今回、開口の位置やサイズを整理したので、
この状況は改善されると思います。
引き続き、柱の差し換え作業は続いていきます。
現場の皆さん、よろしくお願いいたします。
解体工事の進む現場。
暑い中、皆さんごくろうさまです。
床が撤去されて軸組みが現れてきました。
今までささなかった光が内部に入り込みます。
隠れていたところが見えてきます。
壁の中に隠れていた部分。
元はお風呂だったようです。
こういう水の周るところは
やはり柱にしても土台にしても傷んでいます。
柱の焼け焦げた跡。
周囲に燃えた痕跡がないので、
壁の内部で低温炭化していたのかもしれません。
シロアリに食われてほとんどフカフカの柱。
こんなものも見えてきます。
あんまり会いたくないですが(笑)、
こういう箇所の補修はこんなときでないと出来ません。
ここは下屋部分なので
荷重をそれほど受けない箇所でよかったです。
こちらは実測調査時に見つけた
荷重が集中していた柱。
外せるところを外していくと
傷んだ箇所、また傾きなども見えてきます。
補修すべき箇所がはっきりしてきます。
家もすっきりして、少し安心したかのようです。
全て手作業での解体になるので
手がかかります。
実測調査のとき、
天井裏や床下に潜って見ていたところが
顕わに見えてきます。
2階の桁を受けていた桔木(はねぎ)。
梁から金物で吊っている様子がよくわかります。
暑い中、ごくろうさまでした。
解体が一段落すると、
軸組みの歪みや傾き、沈下を直す作業に入ります。
柱をジャッキアップして突き上げているところ。
2階の東南隅に立っていた通し柱です。
30mm近く沈んでいました。
数少ない柱に上からの荷重が集中したのと、
庇が壊れて水が回って足元などが傷んでいた影響もあるかもしれません。
一箇所ずつ寸法をあたって、戻せるだけ戻していきます。
しかし長い年月をかけてゆがんだ部分は
木にクセがついているので戻りきらない箇所もあります。
見方を変えると、
曲がりながらも折れたりせずに、耐えて支えてきた
木の強靭さにあらためて感心します。
大屋根の小屋裏を1階から見たところ。
2階の天井と2階の床が外れている今しか見られない光景です。
少しずつですが確実に
健やかな状態に戻りつつあります。
昭和初期に建った家のリノベーション工事が
この週明けから始まりました。
解体工事に先立って
レベルを出している櫛谷建築のひろくん。
後からの改修の手は加わっていますが
なかなか趣のある家です。
工事前の様子。
中廊下がまっすぐ家の中を通り抜けて曲り、縁側になって
L字型に部屋を囲む特徴的なプラン。
はじめて伺ったときには、
玄関から見えるその廊下突き当りの壁面に
側面から光が差し込んでいるさまが
実際よりはるか遠くの光景のように見えて印象的でした。
タイル張り流しの付いた厨房兼食堂。
板戸のついた天袋収納と障子。
多くの食器などが入っていたのでしょうか。
1階座敷。
床の間も違い棚もついています。
正面の南縁側開口2間半ほどには、
今は途中に新しく補強柱が入っていますが、
元々は柱なしの全面開口だったようです。
座敷の方は右側の西南隅の柱まで、
南も西も2間の開口で柱がなかったらしく、
西面には後補の柱が間に入っていました。
当初はL字型にかなりの開放感があったことでしょうね。
構造的にはちょっと無理があったようですが・・。
2階の座敷。趣きある造りです。
床の沈みや柱のコケはありますが・・。
こちらは
縁側が南から東へL字型に全面開口になっています。
元は東南隅以外、間に柱なしですが
今は後補の補強柱が入っています。
それにあわせて
座敷も東と南がL字型に開放されており、
こちらは東南の隅に柱が一本たちます。
縁側の方は大胆に開放しすぎて下ってきたのでしょう。
鴨居の上下に束が入れられて外から添え柱を取り付ける、
という方法で、南・東面ともに後から補強されています。
外から見たところ。
外は添え柱を通してボルトで中の束と縛っています。
元の開口や造作を残したまま補強しようとすると
こういう形にならざるを得なかったのでしょう。
開口を2面に大きくとった影響は・・
実測調査時。1階の座敷床下に潜ってみると
座敷の南東隅の柱に荷重が集中したため
おそらく無筋のコンクリート基礎を破断して少し沈下していました。
2階の座敷の床をめくってみると・・
1階縁側開口上の桁を吊り下げようとした桔木(はねぎ)らしき部材が
見えてきました。うまくいかなかったようですが・・。
大屋根小屋裏に入ってみると・・・
中央の丸太梁を
南軒桁より半間内側の丸太梁を支点に架けて軒桁を吊り下げ、
柱を抜こうという意図だったようです。
東側も桔木(はねぎ)らしき部材が入っているのですが
支点になる場所がなく金物で吊り下げてあって、
あまりうまくはたらかなかったであろうと思われます。
大屋根の荷重が集中して柱が下がった影響は妻梁にも
継ぎ手の段差となって現れていました。
結構な無理をしながら
開口を2面大きくとることにこだわった
理由はなんだったのだろう・・
その答えは大屋根の上に上がってみてわかりました。
比叡山から東山、大文字まで続く山並み。
今でこそ、周囲は住宅が建て込んで囲まれてしまっていますが、
かつては遮るものなく、
賀茂川から山並みへ続くパノラマが楽しめたことでしょう。
この家が建った昭和初期は・・
当時の地図(昭和5年)を見てもこのあたりに
あまり家が建っていなかったのがわかります。
2階の内縁から送り火を見ることも出来たかもしれません。
そういえば、大徳寺も方丈の東側に今は大きな木が植わっていますが、
戦前まではなくて、賀茂川までの借景をとりこんでいたという話を
聞いたことがあります。
大屋根の上に立ってみて、当時の眺望や周囲の様子に
しばし想いを馳せてみることができました。
大屋根は入母屋屋根になっていますが、
妻壁や隅が傷んでいます。雨漏りがひどかったようで
十数年前に瓦を葺き替えていました。
下屋根は古い瓦のままです。
形状が複雑で傷んでいるであろうか所もありそうです。
瓦ももうそろそろ葺き替え時です。
かなり以前に増築した部分のようですが、
2階の窓と屋根の取り合いがうまくいかなかったためか
瓦屋根に板金屋根を継いだような不思議な形状になっています。
様々な問題はあるのですが、
何か魅力を感じる家です。
色々な問題を抱えながらも、大きく開口をとろうと試みた、
夢に向かおうとする意志やロマン、そして夢そのものを、
ここから感じるからかもしれません。
そこで、ここでは仮にこの家を
『夢見の家』と呼んでみることにします。
設計の際には問題を解決しながら
新しい住まい手の新たないとなみに沿うような夢を
加えることが出来れば、と想いながら構想していきました。
そうして、いよいよはじまった工事。
新たに生まれ変わります。
再利用できる部材や建具を先にはずして、
一部の解体工事が始まっていきます。
櫛谷建築さん、よろしくお願いいたします。
つづく >