伏見の方で今、町家の改修工事が完了しつつあります。
築120年ほどの町家は
画家であるご両親の代から、住いであると同時に
そのアトリエとして、
また絵画教室としても使われてきました。
版画家である息子さんご夫妻が
老朽化の進んだその家を一度改修して、
再生しようと決意し、
うちに相談に訪ねてこられたのは、もう一昨年のことになります。
その間、色々紆余曲折がありました。
規模も大きく、又大掛かりな補修の必要な箇所も多く、
外観を保存するための補修に対する補助金を受けることが
出来そうだったー結果的には受けられましたがーのですが、
当初の施主の希望的な構想を行うには
予算面から、何度かの軌道修正が必要でした。
しかしその過程で楽しいエピソードも生まれました。
『ストラディバリウス狂想曲』(笑)と、
私は密かに名づけていますが、
画家でもある施主のお母様の奏でたこの小曲は
忘れがたい、又、ほほえましい思い出になりました。
と、同時にそこに画家という、
一つの世界をうみだす人のファンタジーも垣間見た気がします。
画家達の家族の住いとアトリエであった町家には
そんな様々なファンタジーが一杯詰まっていました。
形になったもの、なっていないもの、孕みつつあるもの、
などなど、様々含めて。
家はもうはちきれそうになっていたのかもしれません。
印象的な鳥の絵を沢山描かれていたお父様が逝かれて、
鳥達は実際に飛び立ちたくなったのでしょうか。
満ち満ちたファンタジーは、
自由の空へと飛翔し、還ってゆくかのように放たれ、
家は又新たなファンタジーを受け入れる器として、
舞台として、蘇る・・・。
私には今回の一連の改修の流れがそんな風に映ります。
これもまた、画家の仕掛けたファンタジーなのかもしれませんが・・。
(つづく)